オープニング

老人ホーム

ルルリ「でかいわね」
ミリア「でかいんです」
ルルリ「こんなでかい施設いる?」
ミリア「面倒見るのに楽ちんらしい」
ルルリ「合理化の賜物だったか」
ミリア「年を取ると孤独が嫌らしい」
ルルリ「そういうもんなのかしらね」
ルルリ「世代の違いかも知れないわね」
ミリア「わたしも孤独は嫌かなー」
ルルリ「枢里のみんなが会いに来てくれるでしょ」
ミリア「でも来てくれる人もお年寄りだから」
ミリア「一緒に住むほうが会うの楽だよね」
ルルリ「やっぱり合理化の賜物だった」
ルルリ「スウおばあちゃんのシェアハウスなのね」
ミリア「そういうことみたい」
ルルリ「行ってみましょう」
スウ 「よく来たね、クルル」
ミリア「スウおばあちゃん」
ミリア「あけましておめでとうございます」
ルルリ「凄い人だかりね!」
ルルリ「あの、私はお嬢様じゃなくて!」
ミリア「ルルリがお年寄りに囲まれている」
スウ 「クルルにお年玉をやらないとねえ」
ミリア「いえ、あの」
ミリア「いつもお小遣いありがとうございます」
ミリア「でも、お金の使い方がわからなくて」
スウ 「お金は無理に使わなくてもいいんだよ」
スウ 「困ったときのためのものだからね」
ミリア「おばあちゃんは困ってないんですか?」
スウ 「わーしは困っとらん」
スウ 「セリカがみんな何とかしてくれた」
ミリア「ママ・・・」
スウ 「わーしはもう長くない」
スウ 「あの世には持っていけないんだから」
スウ 「クルルが持っておきなさい」
ミリア「お金はいいから、長生きして欲しい」
スウ 「人はいつか死ぬものよ」
スウ 「わーしはクルルの中で生きたい」
スウ 「シエラでもなくセリカでもなく」
スウ 「クルルが一番、枢里に近いから」
ミリア「枢里に近い・・・」
ルルリ「はいはい通して通してねー」
ルルリ「九九言えただけで褒めないでくださいねー」
ミリア「ルルリ、モテモテだね」
スウ 「!」
スウ 「クルル、この子は」
ミリア「お友達のルルリだよ」
ルルリ「はじめまして」
スウ 「ル、ルリか」
ルルリ「はい」
スウ 「頼む、わーしを殺してくれ!」
ルルリ「!?」
ミリア「おばあちゃん?」
スウ 「殺してくれ!」
ルルリ「・・・・・・」
ミリア「スウおばあちゃん、どうしたの?」
スウ 「頼むーッ!」
ミリア「ごめんルルリ、誰か呼んできて」
ルルリ「わかった」
ミリア「おばあちゃん、しっかりして」
ミリア「ベッドで少し休もうね」
ミリア「・・・・・・」
『枢里・商業地』
ルルリ「・・・あの、ミリア」
ミリア「うん」
ルルリ「今まで普通に元気だったのよね?」
ミリア「少し認知症かも、とは言われてたの」
ミリア「わたしの名前もずっとわからないし」
ルルリ「クルルって呼ばれてたわね」
ミリア「枢里のことが心配なんだと思う」
ルルリ「なるほど」
ミリア「でも、今日みたいなのは初めて」
ミリア「どうしちゃったんだろう」
ルルリ「私と話す前はどうだったの?」
ミリア「たしか、お年玉をくれる話になって」
ミリア「お金大丈夫か聞いたら」
ミリア「わたしはもう長くない、って」
ルルリ「それがどうして殺してくれって話になるの」
ミリア「ごめんね」
ルルリ「ミリアに言ってるんじゃないわ」
ルルリ「ちょっといきなりだったから混乱してる」
ミリア「そうだよね」
ルルリ「良くなるといいわね」
ミリア「うん」
『数日後、三剣枢が公式に発表を行い』
『アリアが三剣枢里の議決権を保有する』
『という宣言の通りに、株式の譲渡が行われた』
ミリア「わたし、株を貰った」
ルルリ「それ、すごく大事なものなのよ」
ミリア「でも、千円なんだって」
ルルリ「そうね。額面は1株千円」
ルルリ「でも、議決権つきの株はそれしか無いのよ」
ミリア「議決権?」
ルルリ「まず、枢里が会社なのはわかる?」
ミリア「株式会社三剣枢里なんだよね」
ルルリ「そう。私達が枢里と呼んでいるのは」
ルルリ「この会社が保有する土地のことなのね」
ミリア「うん」
ルルリ「株式会社だから会社は株主のもので」
ルルリ「ママは住民による株の保有を進めてる」
ルルリ「でも、人によって買える量が違うのよね」
ルルリ「多く持ってる人と持ってない人がいる」
ミリア「うん」
ルルリ「一番持ってるのはママで」
ルルリ「スウおばあちゃんが持ってたのを全部買った」
ミリア「どうして?」
ルルリ「スウおばあちゃんが亡くなると」
ルルリ「シエラおばあちゃんが全部相続するからよ」
ルルリ「枢里を去る時は株を全部売るルールだから」
ルルリ「株が渡る前に全部買い取ったのね」
ミリア「シエラおばあちゃんは帰ってこないのかな」
ルルリ「田舎が嫌で三剣本社を移したんだから」
ルルリ「もう帰ってこないわよ」
ミリア「うん・・・」
ルルリ「それで株のかわりのお金が余ってるから」
ルルリ「少しでもミリアに渡したいんでしょうね」
ルルリ「大々的にやるとシエラが煩いでしょうけど」
ミリア「一億円は、高いけど、高くないんだよね?」
ルルリ「一人分には多いけど、七万人には少ないわね」
ルルリ「一人で七万回ご飯を食べるか」
ルルリ「七万人で一回ご飯を食べるかということよ」
ミリア「なるほど」
ルルリ「株の話だったわね」
ルルリ「みんなが持ってる株の数はバラバラだから」
ルルリ「普通の株式会社みたいに」
ルルリ「株を多く持ってる人が偉いってことになると」
ルルリ「不平等になっちゃうのよ」
ミリア「三剣枢里は平等なの?」
ルルリ「みんなが買う株は議決権が無いから」
ルルリ「まあ、平等と言えるでしょうね」
ルルリ「ただし例外が一つだけあって」
ルルリ「ミリアの1株だけに議決権がついてる」
ルルリ「その株を持ってる人だけは偉いのよ」
ルルリ「偉いというか、会社の未来を決められるの」
ミリア「未来を決める」
ルルリ「まさに、お嬢様が持つのに相応しい株券だわ」
ミリア「でも、スウおばあちゃんが持ってたんだよね」
ミリア「シエラおばあちゃんもママも持ってなかった」
ルルリ「そうね。セリカ宣言には力が無かった」
ルルリ「スウおばあちゃんが頭を下げたからこそ」
ルルリ「枢里のみんなは受け入れてくれたのよ」
ミリア「どうして、わたしなんだろう」
ミリア「ママのほうがうまく出来そうなのに」
ミリア「シエラでもセリカでもなく」
ミリア「わたしが一番、枢里に近い」
ルルリ「それ、スウおばあちゃんに言われたの?」
ミリア「うん」
ルルリ「さすがね」
ルルリ「シエラは枢里を捨ててからともかくとして」
ルルリ「セリカママはお金で維持してきただけ」
ルルリ「それはきっと、枢里のあり方とは違うのよ」
ミリア「枢里のあり方」
ルルリ「セリカ宣言は、肝心な所が達成出来てないの」


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Last-modified: 2021-02-18 (木) 13:16:33