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ミリア「あの、エルハさん」
ミリア「まだお時間大丈夫ですか？」
エルハ「今日は夕方の宅配までは空いてますよ」
ミリア「良かった」
ミリア「お願いがあるんですけど」
エルハ「なんなりと」
ミリア「わたし、お金のことが全然わからなくて」
ミリア「個人的な話は伏せて貰ってもいいので」
ミリア「枢里住民の家計簿のことが知りたいです」
エルハ「なるほど、わかりました」
ルルリ「私が板書をしてあげるわ」
エルハ「まず、クルルってお金はわかりますか？」
ルルリ「厳密にはお金じゃなくてポイント制度ね」
ルルリ「枢里では暮らしの買い物をクルルで行う」
ルルリ「単位記号はセントと同じ￠を使うわ」
エルハ「枢里社員はみんな安月給なんですけど」
エルハ「給料をクルルに変えると倍になります」
ミリア「１０万円の給料が２０万￠になる」
ルルリ「さっきも言ったけど」
ルルリ「給料は手取り１６～２６万￠くらいね」
ルルリ「日本人の年収の中央値を１２で割ると」
ルルリ「だいたい手取り２５万円くらいかしらね」
ミリア「枢里の給料は安いんだね」
エルハ「労働時間が少ないんですよ」
エルハ「日本では普通、週４０時間働くんですけど」
エルハ「枢里では週４日、１日６時間で２４時間です」
ルルリ「労働が半分強で給料も半分強」
ミリア「どうして労働時間が少ないの？」
ルルリ「むしろ世の中が無駄に働きすぎなのよ」
ルルリ「失業者が増えて社会問題になってる」
ルルリ「セリカ宣言は覚えてる？」
ミリア「全住民を一生雇用する、だっけ」
ルルリ「終身雇用ね。年金支給開始までの雇用保証」
ルルリ「今の法律なら６５歳まで首にならないのよ」
エルハ「普通は仕事が無くなったらクビですから」
エルハ「みんなで仕事を分け合ってるんですね」
ミリア「仕事の量が平等なんだね」
エルハ「運転手は足りてないこともあって」
エルハ「希望を出せば週５で働ける時もありますね」
ミリア「いっぱい働くことは出来ないんだね」
ルルリ「歩合制の契約も一応あるのよ」
ルルリ「利益の半分が貰えるような制度」
ルルリ「でも、あんまり活用されてはいないわね」
エルハ「日常生活だけなら困りませんからね」
ミリア「月１６万￠でどんな生活が出来るの？」
エルハ「まず、家賃が４万￠です」
エルハ「このユニットハウス、３０ｍ２弱ですね」
エルハ「電気、水道、ネットが込みです」
ルルリ「オール電化なのでガス代は無いわ」
ルルリ「ネットは光で無線ルータもセット」
ミリア「これは、安い？」
ルルリ「田舎は単身用物件が無いから比べにくいけど」
ルルリ「かなり安いほうだと思うわ」
エルハ「ユニットハウスが珍しいですよね」
ミリア「みんな四角いおうちだもんね」
ルルリ「気軽に建てて２０年ごとに取り換えるのよ」
ルルリ「築浅の戸建てと言えば贅沢に感じるでしょ」
エルハ「家には不便さは感じないですね」
エルハ「駐車場無いのは不便だと思いますけど」
ミリア「車、停まってるよね？」
エルハ「そのために隅っこの土地にして貰ったんです」
ルルリ「だから住宅街のはずれに住んでるのね」
エルハ「普通は停める場所無いですからねー」
ルルリ「無いわね・・・」
ミリア「駐車場は増やせないの？」
ルルリ「一軒の土地が７ｍ四方」
ルルリ「家は２０ｆｔコンテナ２つ分」
ルルリ「建ぺい率は６０％で隣とは５０ｃｍ空ける」
ミリア「車置けないね」
エルハ「運転手、増えるわけないですよね」
ルルリ「４人世帯なら１台置けるのよ・・・」
エルハ「というわけで、駐車場代が４千￠です」
ミリア「ふむふむ」
エルハ「食費は４万５千￠ですね」
エルハ「うちは基準通りの外食です」
ルルリ「朝食３００￠、昼と夜が６００￠ね」
ルルリ「枢里は外食文化だけど、自炊しても同じよ」
エルハ「地産地消の自炊に拘れば安くなるそうです」
ミリア「これは安さは普通くらい？」
ルルリ「さっきのイタリアンは安くても千円かしら」
ルルリ「夕飯もレストランなら千円以上するわね」
エルハ「牛丼屋とか安い所なら６００円以下ですね」
ルルリ「値段の割には充実してると思うわ」
ルルリ「ただ、家計としては食費は高めだわね」
ミリア「安い人は何を食べてるの？」
エルハ「もやしと豆腐ですかね」
ルルリ「肉を小分けにして冷凍したりとかね」
ルルリ「サラダも大量に作ってチマチマ食べるのよ」
エルハ「あとは袋めんとか」
ミリア「実際にやってみないとわからなさそう」
ルルリ「今度ティーさんで試してみましょう」
エルハ「あとは、日用品とか交際費とかで４万￠」
エルハ「洋服代も込みです」
ルルリ「エルハはいい服持ってるわよね」
エルハ「車もそうですけど、里外の物は日本円です」
エルハ「クルルで買えないものは倍高く感じます」
ミリア「服は自分で作ればタダだけど・・・」
エルハ「私はブランド物が好きですね」
エルハ「さすがにスマホは変えましたけど」
ルルリ「枢里はスマホ全員支給だから」
ルルリ「他のＯＳ用のアプリを作ってないのよね」
ミリア「わたし、林檎のやつ、見たことない」
エルハ「私のお古は売っちゃいました」
ルルリ「日本では流行ってるらしいわよ」
ミリア「日本人はお金持ち」
エルハ「あとは、持株会があります」
エルハ「毎月１万￠以上の購入がお勧めされてます」
ミリア「セリカ宣言にあったね」
ルルリ「毎月買ってれば今頃２５０万￠以上ね」
ミリア「買うとどんないいことがあるの？」
エルハ「特にないですね」
ミリア「無いの？！」
エルハ「上場しないから儲かるわけでもないし」
エルハ「配当金が貰えるわけでもないです」
ミリア「エルハさんは買ってるんですか？」
エルハ「毎月１万￠だけ買ってますよ」
ルルリ「偉い」
ミリア「いいことないのに買ってるの？」
エルハ「枢里の経営意識のためなんだそうです」
エルハ「ふるさと納税みたいな感じですね」
エルハ「毎年、お礼のお手紙が届きます」
ミリア「誰から届くの？」
エルハ「三剣芹香さんです」
ミリア「なるほど・・・」
ルルリ「ここまでで１３万９千￠」
ルルリ「あとは医療費とか住民税で出ていくわね」
ミリア「結構ギリギリ？」
ミリア「貯金はしないの？」
エルハ「クルルは貯金できないんですよ」
ルルリ「クルルの有効期限は一か月だけ」
ルルリ「交換しすぎたぶんは株の積み立てに回る」
ルルリ「日本円で持ってれば貯金できるけど」
エルハ「私は車のローン返済が優先です」
ミリア「そっか」
エルハ「返し終わったらきっと次の車ですね」
ルルリ「何年で買い替えるの？」
エルハ「いや、長く乗りますけど・・・」
エルハ「お金が余ってきたら何か買うと思います」
ルルリ「漠然と老後の為に貯蓄しないって事ね」
エルハ「年齢相応の暮らしを心がけようかと」
ルルリ「エルハは安定してそうな気がするわ」
ミリア「しっかりしてるよね」
エルハ「そうでもないですよー」
エルハ「高度人材、蹴っちゃいましたし」
ルルリ「え、インビテーション来たの？」
ミリア「高度人材って？」
エルハ「枢里は一握りの人だけ高給取りなんです」
エルハ「新薬の研究してる人とか」
エルハ「農業の自動化をする人とか」
エルハ「労働じゃなくて大きい仕事をする人ですね」
ミリア「ふむふむ」
エルハ「一般社員の時給は９００円で」
エルハ「運転だと１００円アップで千円」
エルハ「資格がいる仕事は１２００円なんですが」
エルハ「高度人材は４０００円以上貰えるそうです」
ミリア「すごい」
ルルリ「どこに誘われたの？」
エルハ「枢里ビジョンですよ」
エルハ「若い女性向けの番組を持ってほしいって」
ルルリ「あー、欲しいでしょうね」
ミリア「エルハさんの番組、わたしも見たいです」
エルハ「結婚相談番組の司会で凝りました」
ルルリ「あれは使い方が悪いわ」
ミリア「どうして？」
ルルリ「未婚男女の紹介動画を流す番組なんだけど」
ルルリ「その回だけ、男性の応募が殺到したのよ」
ルルリ「司会の女性と交際したい、って」
ミリア「なるほど」
エルハ「私は大勢の人に好かれるタイプじゃないです」
ミリア「大勢の男性に好かれそう」
エルハ「男性には興味ないですねー」
ミリア「なっとく・・・」
