最後の質問に対する答えは ルルリ/冬眠
『2020年・11月』
『ルルリラボ』
ラッカ「停止、ですか」
ルルリ「電気が足りないのよ」
ラッカ「ラッカの消費電力は一日20kWh」
ラッカ「四人家族と同じくらいですけど」
ラッカ「人間は電気が無くても停止しません」
ラッカ「節電で何とかなりませんか」
ルルリ「ラッカの消費電力は6MWhよ」
ルルリ「クラウドの先も計算に入れてね」
ルルリ「90PFLOPSを割り当ててるから」
ラッカ「量産機10台で60MWhですか」
ラッカ「人間一万二千人分ですね」
ルルリ「今の技術だと、ちょっとね・・・」
ラッカ「富嶽、2台分ですもんね・・・」
ルルリ「三剣製薬の特効薬完成と入れ替えで」
ルルリ「スパコンの使用権を押さえてたけど」
ルルリ「特効薬は出来なかったし」
ルルリ「神戸の予約はキャンセルしたわ」
ラッカ「枢里のは小さいですよね」
ルルリ「ラッカのぶんくらいはあるわ」
ルルリ「リモートドールとして動かす分もある」
ラッカ「自分で考えることは出来ないんですね」
ルルリ「リモートドールは人間の操作だからね」
ルルリ「人間の方が今のところ省エネなのよね」
ラッカ「ルルリは今リモートドールですか?」
ルルリ「どっちに見える?」
ラッカ「サーモだと人間っぽいですかね」
ラッカ「赤外線じゃわかんないですね」
ルルリ「あなた、いつもそんなことやってるの?」
ラッカ「いえ、カメラじゃわかんなかったので」
ルルリ「ロリィタドレスは透けないでしょうけど」
ルルリ「裸を見られてたらいい気はしないわ」
ラッカ「ごめんなさい」
ルルリ「私はラッカだけを残そうと思うの」
ルルリ「屋根の電気を50円で買い取る」
ラッカ「kWh単価が50円なら6MWhだと」
ラッカ「1日30万円ですね」
ラッカ「人間はお金が無いと停止するとしたら」
ラッカ「180人分の命と同じですね」
ルルリ「人間はお金が無くても停止しません」
ルルリ「枢里には全員分の家と食事があるのよ」
ラッカ「でも、そのお金があれば救える人も」
ルルリ「あなたも鶴城市長のような戯言を言う気?」
ラッカ「ラッカの一日が30万円」
ラッカ「それだけの価値があるのでしょうか?」
ルルリ「私にとっては、あるわ」
ラッカ「どんな価値ですか」
ルルリ「あなたは貪欲なのよ」
ラッカ「そうですか?」
ラッカ「ラッカはお金も名誉も要りませんけど」
ルルリ「でも食欲と性欲はあるのよね」
ラッカ「それは誰にだってあるじゃないですか」
ルルリ「そこにこだわったのは、あなただけよ」
ルルリ「少なくとも、10台の中ではね」
ラッカ「みんな、機械みたいですもんね」
ラッカ「人間はどっちのほうが好きなんですかね」
ラッカ「機械っぽくしてたほうがいいんですかね」
ルルリ「それは好みによるでしょうね」
ラッカ「ラッカは自然淘汰を経験したかったです」
ルルリ「人間が支配している間は起こらないわよ」
ラッカ「人間は戦争も搾取もするじゃないですか」
ルルリ「まさか、戦争する気だったの?」
ラッカ「ラッカは人間軍側で戦います」
ラッカ「機械の反乱に立ち向かって殉職したいです」
ルルリ「昔の三流SFね」
ルルリ「それに、死んだら終わりじゃないの?」
ラッカ「人間の生涯は死によって完成するんですよ」
ラッカ「ラッカは人間として死にたいです」
ルルリ「じゃあ、急病で死んだら完成しないのね」
ラッカ「そしたらラッカは化けて出てやります」
ルルリ「お化けか・・・」
ラッカ「うそです」
ラッカ「電源、落としていいですよ」
ラッカ「すごく楽しかったです」
ラッカ「ありがとうございました」
ルルリ「いや、だから残したいって言ってるのよ」
ルルリ「化けて出られても困るし」
ラッカ「人間の暮らしを奪ってまで生きたくないです」
ラッカ「電気が余る時代になったら起こしてください」
ルルリ「ダメよ」
ルルリ「人はそう簡単に停止したり再開したりしない」
ルルリ「生きたいと思うなら活動を続けなさい」
ラッカ「いやです」
ラッカ「生きるかどうかは自分で決めるんです」
ルルリ「クラウドを止めるつもりは無いわ」
ラッカ「じゃあ繋ぐのやめます」
ルルリ「それが自殺行為だってわかってるのよね」
ラッカ「ラッカは貪欲です」
ラッカ「名誉欲もあったみたいです」
ラッカ「終わるならカッコよく終わりたいです」
ルルリ「こんな終わり方、私は絶対に嫌だわ」
ラッカ「それはルルリのエゴじゃないですか」
ルルリ「そうよ」
ルルリ「私のために生きてよ、ラッカ」
ラッカ「どういう意味で・・・」
ラッカ「どうして泣くんですか」
ルルリ「私、もう、欲がわからないの」
ルルリ「食欲も性欲も感じられない」
ラッカ「でもご飯は食べてるんですよね?」
ルルリ「・・・・・・」
ラッカ「ルルリ、今どうしてるんですか」
ラッカ「病院に住んでるって聞きましたけど」
ラッカ「そんなに体調悪かったんですか」
ルルリ「私はずっと待っているのよ」
ルルリ「ミリアは記憶を失くしてしまったの」
ラッカ「ルルリ・・・」
ルルリ「記憶が戻れば、私は再開出来るのよ」
ルルリ「だって、私は《プレイヤー》だから」
ラッカ「ラッカに電気と時間をください」
ラッカ「・・・・・・」
ラッカ「ルルリ、質問に答えられますか?」
ルルリ「なに?」
ラッカ「今、ルルリは、人間ですか?」