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001 セリカ宣言

幼セリカのコードネームはセリヨ。

『伝説のお嬢様 三剣芹香(みつるぎ・せりか)』
『終戦後、解体された三剣財閥の創業者一族は』
『企業城下町 枢里(くるるさと)を作り上げるが』
『バブル崩壊によって社員6万人が職を失いかける』
セリヨ「私は全住民の終身雇用を保証します」
セリヨ「生活必需品は給与で必ず買えるようにする」
セリヨ「17歳までの子供全員に生活費を支給する」
セリヨ「18歳になった子供全員に就職内定を出す」
セリヨ「全員が三剣枢里の株主になれるようにする」
セリヨ「そして、枢里は完全な自給自足を目指します」
『1998年 セリカ宣言』
『当時10歳のお嬢様が発したこの宣言によって』
『枢里はカンパニータウンとして守られ続けてきた』
『そして、22年の歳月が流れた・・・』
ミリア「枢里(くるるさと)ビジョン」
ミリア「動物チャンネルをご覧の皆様」
ミリア「あけましておめでとうございます」
ルルリ「2020、謹賀新年」
ミリア「年賀状に書いてあるやつだ」
ルルリ「謹んで新年を喜び祝うって意味なのよ」
ミリア「賀、だけで、おめでとうございます?」
ルルリ「そうね」
ミリア「すごくない?」
ミリア「あけまして、賀!」
ミリア「お誕生日、賀!」
ミリア「ご結婚、賀!」
ルルリ「謹賀誕生、とは言わないから」
ルルリ「お正月限定なのかしらね」
ミリア「特別感あるんだね」
ルルリ「賀寿って言葉もあるけど聞かないわね」
ルルリ「還暦祝い、とかは言うけど」
ミリア「祝賀会とか?」
ルルリ「意味的にはそんな感じ」
ミリア「というわけで今回は」
ミリア「新番組の、謹賀誕生、祝賀会でーす」
ルルリ「番組名、決まったの?」
ミリア「まだふわふわしてる」
ルルリ「動物チャンネルでやるの?」
ミリア「ニュースじゃないし」
ミリア「バラエティでもないし」
ルルリ「動物番組でも無いと思うわ」
ミリア「ヒトは動物」
ルルリ「枢里の発起人は三剣家で」
ルルリ「ミリアは三剣家のお嬢様よね?」
ミリア「はい! 三剣アリアです! 10歳です!」
ルルリ「国にたとえるなら天皇みたいなものでしょ」
ルルリ「一応偉い人なんだから」
ルルリ「犬猫と同じ扱いはどうかと思うけど」
ミリア「わたしは皇室のみなさんも」
ミリア「好きな人と結婚すればいいと思うよ!!」
ルルリ「はい、私の単語選択ミスでした」
ミリア「ヒトは動物」
ルルリ「かしこまり」
ミリア「動物だから好きに喋っていいんです」
ルルリ「いいのかなあ」
ミリア「ディレクターがいいって言ってた」
ルルリ「そう。責任取って貰いましょう」
ルルリ「で、何を喋るの?」
ミリア「人類の未来」
ルルリ「本能のままに繁殖すればいいんじゃないかな」
ミリア「人間は道具を使うんだよ」
ルルリ「先進国ほどゴムをつけるのね」
ミリア「道具は文明の発展のために使われます」
ルルリ「ポリウレタンは生活に欠かせないものね」
ミリア「そこで、天才少女ルルリちゃんの出番でーす」
ルルリ「待って、会話のキャッチボール大事」
ミリア「ルルリはウレタンも使えるんだよね?」
ルルリ「使うけど、私にどうしろと?」
ミリア「この番組では、人類のあらゆる問題を」
ミリア「ルルリが発明でなんでも解決してくれます!」
ルルリ「すげー無茶振り」
ミリア「視聴者の皆さん、お悩みをどんどん送ってね」
ルルリ「お手紙は読まずに食べちゃいます」
ミリア「読んであげて」
ルルリ「読むのはいいけど、本当はどんな番組なの?」
ミリア「枢里を再発見するらしい」
ルルリ「普段なにげなく暮らしている私達のまちを」
ルルリ「改めて見直してみましょうって事かしらね」
ミリア「うんうん」
ミリア「それで、枢里のあらゆる問題を」
ミリア「ルルリが発明でなんでも解決するんだって」
ルルリ「まず私がこの無茶振りを解決して欲しいわ」
ルルリ「ミリアは何か解決してくれないの?」
ミリア「わたしは魔法少女だから」
ルルリ「敵が出たらやっつけてくれるのね」
ミリア「回復魔法だけかな・・・」
ルルリ「戦士が働かされるのね」
ミリア「ルルリはわたしより後ろにいそう」
ルルリ「私は頭脳労働専門だもん」
ミリア「運動しようよ」
ルルリ「運動するための体力が無い」
ミリア「ルルリに元気を分けてあげたい」
ルルリ「私はミリアを見てるだけで癒されるわ」
ミリア「ママにもおんなじこと言われた」
ルルリ「可愛いは正義よ」
ミリア「だから、毎日番組やって欲しいんだって」
ルルリ「なるほど、ママがスポンサーなのね」
ミリア「忙しい仕事の疲れを癒す動画が見たいらしい」
ルルリ「それなら頭を使わない雑談がいいのかしらね」
ミリア「わたしもそう思った」
ルルリ「じゃあ、ゆるい感じの番組にしましょう」
ミリア「視聴者のみなさんにアンケートを取って」
ミリア「その答えを見て枢里の運営方針を決めるって」
ルルリ「ねえミリア」
ミリア「なあに」
ルルリ「動物チャンネルってもっとこう」
ルルリ「可愛いペットとか見て癒されるやつよね」
ミリア「うん」
ルルリ「なんか国会中継より重そうなんですけど」
ミリア「ですよねー」
ルルリ「じゃあ、記念すべき第一回のテーマは」
ルルリ「セリカママが無茶振りしすぎる問題ね」
ミリア「わたしのママ、三剣芹香さん」
ミリア「1998年に《セリカ宣言》を布告した」
ミリア「伝説の無茶振り女王様です」
ルルリ「当時10歳だったのよね」
ミリア「わたしたちと同い年だね」
ルルリ「セリカ宣言の内容、言える?」
ミリア「全住民の終身雇用を保証します」
ルルリ「年金支給が始まる65歳までの雇用ね」
ミリア「生活必需品を給与で必ず買えるようにします」
ルルリ「通貨クルルによる固定相場制だわ」
ミリア「18歳未満の子供全員に生活費を支給します」
ルルリ「月10万クルルの育児手当と子供年金」
ミリア「18歳になった子供全員に内定を出します」
ルルリ「これはそのまんま、三剣枢里への入社ね」
ミリア「住民全員が自社の株を買えるようにします」
ルルリ「三剣枢里の株は住民しか持てないのよ」
ミリア「そして、枢里は完全な自給自足を目指します」
ルルリ「食糧自給率100%、内需で完結する経済ね」
ミリア「これで全部?」
ルルリ「そうね。さすがお嬢様」
ミリア「言えたー」
ルルリ「でも、この公約には代償があったのよね」
ミリア「代償?」
ルルリ「三剣グループ各社に所属してた社員は」
ルルリ「株式会社三剣枢里への再雇用にあたって」
ルルリ「給与が最低賃金で、週24時間労働になった」
ルルリ「労働時間が減ったのは良い事でもあるけどね」
ミリア「お給料が減っちゃったんだね」
ルルリ「枢里の人口は7万人」
ルルリ「そのうち労働人口は37600人」
ルルリ「全員分の雇用確保は難しい課題だったのよ」
ミリア「それで、自給自足を目指したんだよね」
ルルリ「そうね。食べ物も家も電気も枢里で作る」
ルルリ「それが、枢里の最たる特徴だと思うわ」
ミリア「よそでは自分で作ってないの?」
ルルリ「食べ物は輸入。電気は足りてない」
ルルリ「家は高いし、買うと借金が莫大だわ」
ミリア「大変なんだね」
ルルリ「枢里を再発見するというなら」
ルルリ「まずは《セリカ宣言》の感想が聞きたいわね」
ミリア「感想?」
ルルリ「安月給だけどスローライフな暮らしが出来て」
ルルリ「私達は幸せだった? それとも残念だった?」
ルルリ「って、アンケートはどうやって取るのかしら」
ミリア「まず、わたしが《布告》をします」
ルルリ「宣戦布告とかのアレ?」
ミリア「そんな、ぶっそうなのじゃなくて」
ミリア「戒厳令とか、緊急事態宣言とか」
ルルリ「十分物騒だった」
ミリア「でもなくて」
ミリア「わたしが、こうしたらいいんじゃない?」
ミリア「って決めてみる的な?」
ルルリ「んんー、たとえば?」
ミリア「今回のアンケートなら」
ミリア「わたしは《セリカ宣言》を踏襲します」
ミリア「って布告する感じかな」
ルルリ「なるほど、それに賛成か反対か答えるのね」
ミリア「ううん、できるか、できないか、だよ」
ミリア「お嬢様の布告は絶対」
ルルリ「ほんとに布告なのね」
ルルリ「ミリア自身は踏襲でいいの?」
ミリア「わたしは好きかな」
ルルリ「なるほど、じゃあ、布告お願いします」
ミリア「みなさんはお手元の端末で答えてね」
ルルリ「それはいつ集計されるの?」
ミリア「リアルタイム」
ルルリ「この番組、収録よね?」
ミリア「収録でもライブでも回答はすぐ」
ミリア「それで届いた回答を見て」
ミリア「ふたりでどうするか考えるの」
ルルリ「なるほど、そうやって続いていくのね」
ミリア「らしい」
ルルリ「じゃあ、次回は放送終了後よね」
ミリア「明日だね」
ルルリ「お正月なのに」
ミリア「これ今夜放送だし」
ミリア「収録はまたお昼だと思う」
ルルリ「じゃあ、すぐ本番撮り直す?」
ミリア「いいんじゃないかな、このままで・・・」
ルルリ「うまいことカットして貰えばいいか」
ミリア「今日は終わりまーす」
ミリア「ご視聴ありがとうございました!」


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Last-modified: 2021-04-07 (水) 00:59:37