ミリア「枢里ビジョン動物チャンネルをご覧の皆様」
ミリア「まだふわふわしてる?」
ルルリ「それは正式な番組名になったの?」
ミリア「まだふわふわしてる」
ルルリ「タイトルも内容もふわっふわで」
ルルリ「よく一か月半も続いたわよね」
ミリア「みんなそろそろ飽きてないかな?」
ルルリ「刺さる人には大人気らしいわ」
ミリア「そんな人めずらしくない?」
ルルリ「枢里にはお嬢様ガチ勢は結構多いわよ」
ミリア「お嬢様ガチ勢」
ルルリ「エルハもすっかり虜になってしまったわ」
ルルリ「前は私がお姫様待遇だったのに」
ミリア「どうやってエルハさんと知り合ったの?」
ルルリ「え」
ルルリ「黙秘します」
ミリア「エルハさんは謎が多い・・・」
ルルリ「ミステリアスなのも魅力のうちなのよ」
ミリア「わたしもミステリアスになろうかな」
ルルリ「ガチ勢が飢え死にしてしまいます」
ミリア「わたしの黙秘権はどこ」
ルルリ「今日のテーマは高度業務でいいの?」
ミリア「それと枢里大学のお話をして欲しい」
ミリア「ゼミの説明はしなくて大丈夫」
ルルリ「枢里大学は私大で偏差値52」
ルルリ「残念ながら自慢にはならないレベルね」
ミリア「普通くらいの大学ってこと?」
ルルリ「良く言えば中堅」
ルルリ「Fランではないけど・・・って感じ」
ルルリ「就職には関係ないけどね」
ミリア「みんな三剣枢里で働くもんね」
ルルリ「だから、高卒と大卒で給料が一緒なの」
ルルリ「これは世界的に珍しい待遇でしょうね」
ミリア「普通は大卒のほうが高くなる?」
ルルリ「そう。そして日本は新卒主義だから」
ルルリ「いい大学を出ていい会社に入るのが」
ルルリ「安定した人生だと信じられていたの」
ミリア「過去形」
ルルリ「その幻想が崩れたのが就職氷河期で」
ルルリ「いまだに混乱は続いているわ」
ミリア「混乱?」
ルルリ「企業は労働者を安く雇いたい」
ルルリ「だけど学歴が高いと安く雇えない」
ルルリ「だからあえて高卒を安く雇ったり」
ルルリ「日本人は高いから外国人を雇ったり」
ルルリ「勉強しても報われるとは限らないの」
ミリア「確かに混乱する」
ルルリ「枢里はどっちにしろ安月給だから」
ルルリ「高卒で働けばいいってわかりやすい」
ミリア「大学は意味ないの?」
ルルリ「枢里大学は学ぶためにあるのよ」
ルルリ「給料や就職率を上げるためじゃない」
ルルリ「だから、18歳の学生は少なくて」
ルルリ「もっと年上の学生が多いのよ」
ルルリ「何回も入学する人だって少なくないわ」
ミリア「そんなに面白いの?」
ルルリ「面白いし、安いのよ」
ルルリ「月額3万¢だから」
ルルリ「学生寮だと生活費込みで10万¢ね」
ミリア「月10万¢だと安いんだよね?」
ルルリ「枢里の最低生活水準ね」
ルルリ「老人ホームも着替え付きで10万¢」
ルルリ「エルハの家でも切り詰めれば10万¢」
ルルリ「国民年金が6万5千円なので13万¢」
ルルリ「枢里の子供年金が10万¢だわ」
ミリア「最低限度で大学に行ける」
ルルリ「それって相当凄いことなのよ」
ルルリ「労働時間が短いから出来る事だわ」
ルルリ「それで大学が趣味の一つになるのよ」
ミリア「大学が趣味」
ルルリ「枢里の人は勉強が娯楽なの」
ルルリ「だから潜在的な知識水準は高いはずよ」
ルルリ「これを何とかお金に出来れば」
ルルリ「安月給から抜け出せるんだけどね」
ミリア「いい仕事ないのかな?」
ルルリ「情報はコンピューターのほうが得意だし」
ルルリ「ITは海外にやられちゃったのよね」
ルルリ「枢里アプリとか売れてもいいのに」
ミリア「便利だよね。無料通話もついてるし」
ルルリ「内製だからスパイの心配が少ないのよ」
ミリア「スパイの心配とかいる?!」
ルルリ「いるのよ。何も大げさな事じゃないわ」
ルルリ「だからクルルトーク以外禁止なの」
ルルリ「私物のスマホでやってる人も」
ルルリ「気を付けて使った方がいいと思うけどね」
ミリア「わたしはわかんないからやめとこう」
ルルリ「安月給を改善する方法は学歴じゃなくて」
ルルリ「仕事に今すぐ役立つ資格を取ることね」
ミリア「運転免許とかだよね?」
ルルリ「枢里は慢性的にドライバー不足だからね」
ルルリ「あとは枢里アプリで確認できるけど」
ルルリ「情報処理系とか介護系とかが欲しいわ」
ルルリ「英語、FP、宅建、社労士は要らない」
ミリア「なんで要らないの?」
ルルリ「お金も不動産も社会保険も」
ルルリ「ぜんぶ三剣枢里で管理しているからよ」
ミリア「英語は?」
ルルリ「英語はITと組み合わせて欲しいわね」
ルルリ「でも英語の資料さえ読めればいいから」
ルルリ「別に出来なくても大きな支障は無いわ」
ミリア「資料はどうやって読むの?」
ルルリ「技術資料は英語出来なくても読めるのよ」
ルルリ「スラングとかジョークとかが無いからね」
ルルリ「文法通りに読めばいいだけ」
ミリア「それは英語なのでは・・・」
ルルリ「自動翻訳してもいいし」
ルルリ「業務で扱う文章は翻訳しやすいのよ」
ミリア「それはちょっとわかる」
ルルリ「でも資格はあくまで一時的なものだから」
ルルリ「仕事の流行りが変わったら取り直し」
ルルリ「ずっと同じ資格では仕事できません」
ミリア「不安定なんだね」
ルルリ「文明が進化しているのよ」
ルルリ「自動運転が普及すれば免許は要らないし」
ルルリ「機械翻訳が発達すれば翻訳家はおしまい」
ルルリ「介護機械が充実すれば介護職は減らせる」
ミリア「最後は全部の仕事が無くなる?」
ルルリ「理論的には全部無くせるはずだわ」
ルルリ「人間に代われるロボットが出来ればね」
ミリア「そろそろ終わりそう」
ルルリ「残念ながら、まだまだだわ」
ルルリ「ロボットを作る仕事で苦労してる段階よ」
ルルリ「そういう仕事が高度業務です」
ミリア「つながった」
ルルリ「ロボットと言うと電子工作っぽいけど」
ルルリ「大規模農家の管理は高度業務なのよ」
ルルリ「少人数と機械でいかに食糧を作るか」
ルルリ「工場の設計や病院の効率化もそう」
ミリア「都市計画みたいな?」
ルルリ「そう。7万人の暮らしを預かる仕事」
ルルリ「大変だけど、やりがいはあると思うわ」
ルルリ「この仕事をしてる人たちは高給取りよ」
ミリア「いくらくらい?」
ルルリ「改めて言われると実は安いんだけど」
ルルリ「一般社員の5倍以上は貰えるわ」
ミリア「5人分のお金を1人で使えるんだね」
ルルリ「三剣枢里の株を買ってる人が多いわ」
ミリア「贅沢とか豪遊みたいな事はしないの?」
ルルリ「仕事自体が贅沢のようなものよ」
ルルリ「農業なら、高層ビルで穀物を作るとか」
ルルリ「工業なら、何百人分の時間が浮くとか」
ルルリ「解決すれば暮らしが良くなるの」
ミリア「浮いた時間はどうなるの?」
ルルリ「理想は勉強や高度業務への再投資ね」
ルルリ「研究をしてもっと楽になって」
ルルリ「楽になったぶんもっと研究するのよ」
ミリア「やっぱり全部無くなりそう」
ルルリ「仕事を無くす以外にも課題はあるから」
ルルリ「やることが完全に無くなりはしないわ」
ミリア「研究も大変そうだもんね」
ルルリ「高度業務には、少し楽なのがあるわよ」
ルルリ「枢里ビジョンのプロデューサーとか」
ルルリ「人気番組を作れば高給取りってわけ」
ミリア「この番組はどうかな?」
ルルリ「プロデューサーは三剣芹香さん」
ミリア「そっかー」
ルルリ「スタッフさんは沢山います」
ミリア「いつもありがとうございます」
ルルリ「エルハはプロデューサー蹴ったらしい」
ミリア「ママを?!」
ルルリ「依頼されたけど断ったって意味ね」
ルルリ「若い女性向けの番組をやって欲しいって」
ミリア「凄くためになりそう」
ルルリ「住民チャンネルで司会した事もあるのよ」
ミリア「どんな番組?」
ルルリ「結婚相談。男女のPR動画を流すやつね」
ルルリ「その回は男性の応募が殺到したの」
ミリア「オチが読めた」
ルルリ「美人の無駄遣いでしょ」
ミリア「女性が応募すれば良かったかも」
ルルリ「ミリアもわかってきたわね」
ルルリ「それで改めて女性向けに」
ルルリ「体形維持のエクササイズとか」
ルルリ「デートに着ていく服選びとか」
ルルリ「エルハが活躍する番組を作ろうとしたの」
ミリア「それはエルハさんを見たいだけだよね」
ルルリ「その通り」
ミリア「わたしは本音と建前がわかってしまった」
ルルリ「大人になってしまったのね」
ミリア「エルハさんはこの番組で独占しよう」
ルルリ「いよっ、敏腕プロデューサー!」
ミリア「それでは次回をお楽しみに!」
ルルリ「行動が早い」