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031 高度業務

ミリア「枢里ビジョン動物チャンネルをご覧の皆様」
ミリア「まだふわふわしてる?」
ルルリ「それは正式な番組名になったの?」
ミリア「わかんない」
ルルリ「タイトルも内容もふわっふわで」
ルルリ「よく一か月も続いたわよね」
ミリア「いつまでやるんだろうね」
ルルリ「そもそも何のためにやってるんだっけ」
ミリア「枢里を再発見するんだよ」
ルルリ「そうじゃなくて売上目標とか社会貢献とか」
ミリア「ママの癒しだよ」
ルルリ「そうだったわ」
ルルリ「お嬢様成分を補給しないと死んじゃうのよね」
ミリア「死なないと思う」
ルルリ「枢里にはお嬢様ガチ勢は結構多いわよ」
ミリア「お嬢様ガチ勢」
ルルリ「エルハもすっかり虜になってしまったわ」
ルルリ「前は私がお姫様待遇だったのに」
ミリア「どうやってエルハさんと知り合ったの?」
ルルリ「え」
ルルリ「黙秘します」
ミリア「エルハさんは謎が多い・・・」
ルルリ「ミステリアスなのも魅力のうちなのよ」
ミリア「わたしもミステリアスになろうかな」
ルルリ「ガチ勢が飢え死にしてしまいます」
ミリア「わたしの黙秘権はどこ」
ルルリ「今日のテーマは高度業務でいいの?」
ミリア「それと枢里大学のお話をして欲しい」
ミリア「ゼミの説明はしなくて大丈夫」
ルルリ「枢里大学は私大で偏差値52」
ルルリ「残念ながら自慢にはならないレベルね」
ミリア「普通くらいの大学ってこと?」
ルルリ「良く言えば中堅」
ルルリ「Fランではないけど・・・って感じ」
ルルリ「学生は枢里住民だし、内定済みだから」
ルルリ「就職には関係ないけどね」
ミリア「みんな三剣枢里で働くもんね」
ルルリ「だから、高卒と大卒で給料が一緒なの」
ルルリ「これは世界的に珍しい待遇でしょうね」
ミリア「普通は大卒のほうが高くなる?」
ルルリ「そう。そして日本は新卒主義だから」
ルルリ「いい大学を出ていい会社に入るのが」
ルルリ「安定した人生だと信じられていたの」
ミリア「過去形」
ルルリ「その幻想が崩れたのが就職氷河期で」
ルルリ「いまだに混乱は続いているわ」
ミリア「混乱?」
ルルリ「企業は労働者を安く雇いたい」
ルルリ「だけど学歴が高いと安く雇えない」
ルルリ「だからあえて高卒を安く雇ったり」
ルルリ「日本人は高いから外国人を雇ったり」
ルルリ「勉強しても報われるとは限らないの」
ミリア「確かに混乱する」
ルルリ「枢里はどっちにしろ安月給だから」
ルルリ「高卒で働けばいいってわかりやすい」
ミリア「大学は意味ないの?」
ルルリ「枢里大学は学ぶためにあるのよ」
ルルリ「給料や就職率を上げるためじゃない」
ルルリ「だから、18歳の学生は少なくて」
ルルリ「もっと年上の学生が多いのよ」
ルルリ「何回も入学する人だって少なくないわ」
ミリア「そんなに面白いの?」
ルルリ「面白いし、安いのよ」
ルルリ「月額3万¢だから」
ルルリ「学生寮だと生活費込みで10万ね」
ミリア「月10万だと安いんだよね?」
ルルリ「枢里の最低生活水準ね」
ルルリ「老人ホームも着替え付きで10万」
ルルリ「エルハの家でも切り詰めれば10万」
ルルリ「国民年金が6万5千円なので13万」
ルルリ「枢里の子供年金が10万だわ」
ミリア「最低限度で大学に行ける」
ルルリ「それって相当凄いことなのよ」
ルルリ「労働時間が短いから出来る事だわ」
ルルリ「それで大学が趣味の一つになるのよ」
ミリア「大学が趣味」
ルルリ「枢里の人は勉強が娯楽なの」
ルルリ「だから潜在的な知識水準は高いはずよ」
ルルリ「これを何とかお金に出来れば」
ルルリ「安月給から抜け出せるんだけどね」
ミリア「いい仕事ないのかな?」
ルルリ「情報はコンピューターのほうが得意だし」
ルルリ「ITは海外にやられちゃったのよね」
ルルリ「枢里アプリとか売れてもいいのに」
ミリア「便利だよね。無料通話もついてるし」
ルルリ「内製だからスパイの心配が少ないのよ」
ミリア「スパイの心配とかいる?!」
ルルリ「いるのよ。何も大げさな事じゃないわ」
ルルリ「だからクルルトーク以外禁止なの」
ルルリ「私物のスマホでやってる人も」
ルルリ「気を付けて使った方がいいと思うけどね」
ミリア「わたしはわかんないからやめとこう」
ルルリ「安月給を改善する方法は学歴じゃなくて」
ルルリ「仕事に今すぐ役立つ資格を取ることね」
ミリア「運転免許とかだよね?」
ルルリ「枢里は慢性的にドライバー不足だからね」
ルルリ「あとは枢里アプリで確認できるけど」
ルルリ「情報処理系とか介護系とかが欲しいわ」
ルルリ「英語、FP、宅建、社労士は要らない」
ミリア「なんで要らないの?」
ルルリ「お金も不動産も社会保険も」
ルルリ「ぜんぶ三剣枢里で管理しているからよ」
ミリア「英語は?」
ルルリ「英語はITと組み合わせて欲しいわね」
ルルリ「でも英語の資料さえ読めればいいから」
ルルリ「別に出来なくても大きな支障は無いわ」
ミリア「資料はどうやって読むの?」
ルルリ「技術資料は英語出来なくても読めるのよ」
ルルリ「スラングとかジョークとかが無いからね」
ルルリ「文法通りに読めばいいだけ」
ミリア「それは英語なのでは・・・」
ルルリ「自動翻訳してもいいし」
ルルリ「翻訳しやすい文章のはずよ」
ルルリ「業務で扱う文章ならね」
ミリア「それはちょっとわかる」
ルルリ「でも資格はあくまで一時的なものだから」
ルルリ「仕事の流行りが変わったら取り直し」
ルルリ「ずっと同じ資格では仕事できません」
ミリア「不安定なんだね」
ルルリ「文明が進化しているのよ」
ルルリ「自動運転が普及すれば免許は要らないし」
ルルリ「機械翻訳が発達すれば翻訳家はおしまい」
ミリア「仕事が無くなっちゃう」
ルルリ「枢里は生活保障があるから」
ルルリ「食い扶持のために無駄な仕事を残さない」
ルルリ「どんどん新しい仕事をしていくのよ」
ミリア「ずっと出来る仕事は無いの?」
ルルリ「最後に残る仕事は、ロボットのお世話よ」
ルルリ「もしもそれが必要無くなったら」
ルルリ「人間の仕事はおしまいね」
ミリア「そろそろ終わりそう」
ルルリ「残念ながら、まだまだだわ」
ルルリ「そこに行きつくまでに人間が必要なの」
ルルリ「ロボットを作る仕事が重要なのよ」
ミリア「どういう風に作るの?」
ルルリ「それを考えるところからが研究ね」
ルルリ「そういう仕事が高度業務です」
ミリア「つながった」
ルルリ「ロボットと言うと電子工作っぽいけど」
ルルリ「たとえば大規模農家は高度業務なのよ」
ルルリ「少人数と機械でいかに食糧を作るか」
ルルリ「工場の設計や病院の効率化もそう」
ルルリ「都市計画そのものが高度な仕事だわね」
ミリア「枢里を作るお仕事かな」
ルルリ「そう。7万人の暮らしを預かる仕事」
ルルリ「大変だけど、やりがいはあると思うわ」
ルルリ「この仕事をしてる人たちは高給取りよ」
ミリア「いくらくらい?」
ルルリ「改めて言われると実は安いんだけど」
ルルリ「一般社員の5倍以上は貰えるわ」
ミリア「5人分のお金を1人で使えるんだね」
ルルリ「そういうことになるわね」
ルルリ「三剣枢里の株を買ってる人が多いわ」
ミリア「贅沢とか豪遊みたいな事はしないの?」
ルルリ「しないわね」
ルルリ「大きな研究予算がつくほうが大事」
ルルリ「成果を上げれば大きな研究が出来るの」
ミリア「どんな研究?」
ルルリ「農業なら、高層ビルで穀物を作るとか」
ルルリ「成功すれば土地問題が一気に解決するわ」
ルルリ「発電所とか電池とか自動運転でもいいし」
ルルリ「新しい暮らしに繋がるような研究よ」
ミリア「ルルリは何か研究してないの?」
ルルリ「してるじゃん!!」
ミリア「ごめん・・・」
ルルリ「まあ、それくらいがいいのかもね」
ルルリ「あんまり騒ぎになるのも嫌だし」
ルルリ「でも、あの研究は高度業務ではないわ」
ルルリ「まだ成果としては限定的だからね」
ミリア「ルルリは頑張ってる最中なんだね」
ルルリ「今が一番楽しいわ」
ルルリ「あとは高度業務にも少し楽なのがある」
ルルリ「枢里ビジョンのプロデューサーとか」
ルルリ「人気番組を作れば高給取りよ」
ミリア「この番組はどうかな?」
ルルリ「プロデューサーは三剣芹香さん」
ミリア「そっか・・・」
ルルリ「スタッフさんは沢山います」
ミリア「いつもありがとうございます」
ルルリ「エルハはプロデューサー蹴ったらしい」
ミリア「誰を?!」
ルルリ「依頼されたけど断ったって意味ね」
ルルリ「若い女性向けの番組をやって欲しいって」
ミリア「凄くためになりそう」
ルルリ「住民チャンネルで司会した事もあるのよ」
ミリア「どんな番組?」
ルルリ「結婚相談。男女のPR動画を流すやつね」
ルルリ「その回は男性の応募が殺到したの」
ミリア「オチが読めた」
ルルリ「美人の無駄遣いでしょ」
ミリア「女性が応募すれば良かったかも」
ルルリ「ミリアもわかってきたわね」
ルルリ「それで改めて女性向けに」
ルルリ「体形維持のエクササイズとか」
ルルリ「デートに着ていく服選びとか」
ミリア「わたしは本音と建前がわかってしまった」
ルルリ「大人になってしまったのね」
ミリア「エルハさんはこの番組で独占しよう」
ルルリ「いよっ、敏腕プロデューサー!」
ミリア「それでは次回をお楽しみに!」
ルルリ「行動が早い」


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Last-modified: 2021-04-09 (金) 23:54:32