ルルリ「ここは」
ルルリ「病院ね」
ルルリ「私はルルリ」
ルルリ「3月30日の深夜」
ルルリ「倒れてから半日くらいか」
ルルリ「世界は続いている」
ルルリ「クルルトークに重要通知が来てる」
ルルリ「PCでメールを読め、と」
ルルリ「珍しい連絡手段ね」
ルルリ「私のノートPCも用意してあるわ」
ルルリ「新着メールが届いています」
ルルリ「ほーほー」
ルルリ「なるほど」
ルルリ「それは困ったわね」
ルルリ「私、自分は小説か何かの登場人物で」
ルルリ「運命には理由があると思い込んでたわ」
ルルリ「主人公が意味もなく死ぬ時なんて」
ルルリ「異世界転生するためか」
ルルリ「別の主人公に交代させるためか」
ルルリ「あるいは私は主人公ではなくて」
ルルリ「泣き回のための捨てキャラだったとか」
ルルリ「それならもっと目立つ死に方するか」
ルルリ「予兆はあったにせよ」
ルルリ「お花見中の突然死は理不尽だわ」
ルルリ「でも、理不尽な目に遭って初めて」
ルルリ「私は自分が人間臭いと思っている」
ルルリ「死んでもいいくらい幸せだったけど」
ルルリ「私が人間ならやっぱり生きたいわ」
ルルリ「1時間で結論を出すのは難しいわね」
ルルリ「生きるためには」
ルルリ「医学の進歩に頼るか」
ルルリ「ミリアの記憶が戻るのを待つか」
ルルリ「いずれにしても時間が必要だわ」
ルルリ「まずは生命維持が喫緊の課題ね」
ルルリ「それはそれとして」
ルルリ「ダメだった場合」
ルルリ「ハードディスクはオタク仲間に託す」
ルルリ「いや、無理だわ」
ルルリ「フォルダ単位で形見分けとか」
ルルリ「恥ずかしすぎて死ぬ」
ルルリ「ミリアの友達を増やしたいわね」
ルルリ「喪失を乗り越えるのに仲間が欲しい」
ルルリ「もうちょっとで通学だったのになあ」
ルルリ「何かいい方法は無いかしら」
ルルリ「私の生存と最悪の場合を両立する方法」
ルルリ「私は生きていても身体が動かない」
ルルリ「私が治るにはミリアの記憶回復が必要」
ルルリ「いま私が死ぬとミリアの喪失が大きい」
ルルリ「私が2人必要だわ」
ルルリ「そうか、そうね」
ルルリ「枢里の未来は今のところ明るいはず」
ルルリ「今更私がどうこう言うものでも無し」
ルルリ「電力の確保さえ維持してくれれば」
ルルリ「とするとフワシコもアリか・・・」
ルルリ「新規作成」
ルルリ「To セリカ」
ルルリ「本文」
ルルリ「おつるり」
ルルリ「1」
ルルリ「自然治癒できなかった場合に備えて」
ルルリ「コールドスリープを手配して欲しい」
ルルリ「施術は心臓停止前に行う」
ルルリ「つまり生きている状態を維持したい」
ルルリ「2」
ルルリ「施術の成否を問わず」
ルルリ「私の精子は」
ルルリ「んなもんないわ!」
ルルリ「私の生き死には隠匿すること」
ルルリ「最悪の場合でも遺体の廃棄を避けたい」
ルルリ「コールドスリープ後は厳に面会拒絶」
ルルリ「ミリアもなんとか断って」
ルルリ「期限はミリアが結婚するまで」
ルルリ「3」
ルルリ「スパコン108台を常時割り当て」
ルルリ「接続相手はヒューマノイド2号機」
ルルリ「ルルリラボの蓄積データと」
ルルリ「他に用意する私の記憶を学習させて」
ルルリ「ルルリを再現すること」
ルルリ「名称ルッカ」
ルルリ「ルルリは病院でリハビリしながら」
ルルリ「リモートドールでルッカを動かす」
ルルリ「という設定ね」
ルルリ「暮らしも続けるし通学もする」
ルルリ「出来れば始業式に間に合わせて」
ルルリ「以後ラッカも残り半分だけ割り当て」
ルルリ「可能なら製薬研究は神戸に回して」
ルルリ「万が一電力確保に不安があるなら」
ルルリ「フワシコに移設して頂戴」
ルルリ「4」
ルルリ「この連絡は機密とする」
ルルリ「今後も同様」
ルルリ「連絡手段はメールがベストだわ」
ルルリ「少ない時間で状況を把握したい」
ルルリ「ジップに要約して貰ってもいい」
ルルリ「こっちから送る時も編集して貰うかも」
ルルリ「5」
ルルリ「進捗が見えた時点で再度の投薬を希望」
ルルリ「その時点の情報で方針を確定する」
ルルリ「今のうちに聞きたい事は聞いて頂戴」
ルルリ「忙しい中ありがとう」
ルルリ「いじよろ」
ルルリ「送信」
ルルリ「これでいいでしょう」
ルルリ「あとは私の記憶を遺すことね」
ルルリ「八剣世界の記憶は既にまとめてある」
ルルリ「アリアさんと会ってからは記録の通り」
ルルリ「お父さんとお母さんは仲が良かった」
ルルリ「私は婆ちゃんのことが嫌いだったけど」
ルルリ「二人は私に味方してくれたわ」
ルルリ「私は何も知らない小学生だった」
ルルリ「髪も短かったし、Tシャツだった」
ルルリ「こんなに病弱では無かったと思うわ」
ルルリ「もちろん天才少女でも無かった」
ルルリ「一つ前の世界は記憶が曖昧だわ」
ルルリ「別の天才少女と出会った気がする」
ルルリ「それでも感染は防げなかったわね」
ルルリ「あとは、セリカママが知ってるぶんと」
ルルリ「パパが知ってるルルリのぶんと」
ルルリ「ミリアと暮らしてからの全データね」
ルルリ「これらをすべて合わせれば」
ルルリ「ほぼ完全な記憶になるはず」
ルルリ「すべてをルッカに入力して欲しいわ」
ルルリ「可能な限り何回でも学習させて」
ルルリ「それがルルリになる」
ルルリ「私の肉体が眠るとしても」
ルルリ「魂が記憶に宿るかも知れないわ」
ルルリ「私はラッカに魂を感じ始めている」
ルルリ「ラッカに近づくことを私は望んでいる」
ルルリ「命が不自由なら」
ルルリ「人工生命があればいい」
ルルリ「なんて、みんなは納得できないかしら」
ルルリ「パパ」
ルルリ「チューするか」
ルルリ「こっち来て」
ルルリ「ハグして」
ルルリ「ん」
ルルリ「ありがと」
ルルリ「私、あなたの娘に生まれて良かったわ」
ルルリ「それじゃあ、おやすみなさい」
ルルリ「いいけど、ミュートにしてね」
ルルリ「喉が動かなくなるまで、歌を歌うから」
ルルリ「絵を描く時間は無さそうだから」
ルルリ「せめて、思い出せる限りの音楽を」