ルルリ「ジャングル島の外れにお邪魔しています」
ミリア「ティーさんが見つけた牧場だね」
ルルリ「山羊だけじゃなくて色んな家畜がいるわ」
ルルリ「ここも観光スポットになるんじゃない?」
クロエ「枢里乳業は観光できるの?」
ルルリ「言われてみれば観光ルートじゃないわね」
ミリア「見学はできるかも」
クロエ「うちは観光島以外は進入禁止なんだよ」
クロエ「生活に必要なものを作ってるから」
ミリア「お邪魔してて大丈夫?」
クロエ「ここは全然平気」
クロエ「でも工場はカメラ撮影を御遠慮ください」
ルルリ「楽しみになってきたわ」
クロエ「自動車は日本が世界一なんじゃないの?」
ルルリ「ガソリン車はともかくEVは微妙ね」
ルルリ「いち早く手掛けた所は苦戦してるわ」
クロエ「バッテリーが重たいんだってね」
ルルリ「そう。そして高いのよ」
ルルリ「太陽光発電の蓄電池すら買えてないわ」
ミリア「いくらするの?」
ルルリ「枢里全戸分で2012年当時360億円」
ルルリ「今年導入予定のはたったの80億円よ」
ミリア「安いけど高い」
クロエ「うちの国家予算並みだ」
ルルリ「フワシコのEVも電池だけで16万円」
ルルリ「一万台導入時点ならもっと高かったはず」
クロエ「三年で一気に車社会になったんだよ」
ルルリ「だから免許ナシで乗れるのよね」
ミリア「免許いらないの?!」
クロエ「ほぼ自動運転だからね」
ミリア「進んでる」
ミリア「交通事故とか大丈夫なの?」
ルルリ「低速道路が整備されてるのよ」
ルルリ「制限速度は時速25キロ」
クロエ「低速での死者は出たことないね」
ルルリ「1時間あれば島を一周できるし」
ルルリ「車社会だから歩行者がほぼいない」
ミリア「枢里とは逆かも」
ルルリ「バスと歩行者ばっかりだもんね」
クロエ「自動運転にしないの?」
ルルリ「日本の公道はまだ許可が下りないのよ」
ルルリ「道が狭いから25キロでも事故が怖いし」
クロエ「日本のほうが島は大きいのになー」
ルルリ「まだまだ土地信仰が強いのよ」
ルルリ「家を買って一生そこに住むみたいな」
クロエ「宮殿島だね」
ルルリ「5万人分の土地を綺麗に区切ってるの」
ルルリ「2万人は集合住宅だけど」
ミリア「寮だよね。独身寮とか年寄寮とか」
ルルリ「年寄寮と介護施設で1万人規模よね」
クロエ「高齢化すごいなあ」
ルルリ「老人の長生きが最優先の国だからね」
ルルリ「若者を犠牲にしてまで」
クロエ「金持ちの国はやることが違うなあ」
ミリア「子供の医療費も格安なんだよ」
ルルリ「わしゃ助かっとるのう」
クロエ「ルルリは病気なの?」
ルルリ「特に何の病気ってわけでもないけど」
ルルリ「身体が弱くて毎月通院してるわ」
クロエ「元気そうに見えるけどなあ」
ルルリ「フワシコにいると楽なのよねー」
ミリア「しばらく住んでみる?」
ルルリ「ミリアを独り占めできないから帰るわ」
クロエ「二人は付き合ってんの?」
ミリア「え、うん」
ルルリ「ファッ?!」
ミリア「なにその反応」
ルルリ「つつつ付き合うとか」
ルルリ「考えたこと無かったわ」
クロエ「付き合ってないの?」
ルルリ「型にはめて考えたことが無いってこと」
ルルリ「意識したら緊張するじゃん」
ミリア「いまさら?!」
ミリア「毎晩一緒に寝てますけど?」
ルルリ「眠れなくなりそう」
ミリア「トントンしてあげよう」
クロエ「ルルリは可愛いとこあるよな」
ミリア「大人の時と子供の時がある」
ルルリ「もー! 工場いきましょ!」
ミリア「恋人つなぎしよー」
ルルリ「はいはい」
『電気自動車工場』
『映像は動物と戯れるお嬢様達です』
ルルリ「これは凄いわ」
クロエ「そんなに凄いかな?」
ミリア「なんていうか」
ルルリ「これを見てしまうと、乗るのが怖いわね」
ミリア「わかる」
クロエ「でも、しっかりしてたでしょ?」
ルルリ「車は頑丈だってのは先入観よね」
ルルリ「たとえるなら」
ルルリ「木製のカラーボックス」
クロエ「ハイテン鋼だよ」
ルルリ「六枚の正方形の紙を用意して」
ルルリ「辺を貼り合わせてサイコロを作る感じ」
クロエ「ラダーフレーム構造って言うんだよ」
クロエ「ボディだけ交換したりできるんだ」
ルルリ「最高速度が25キロで」
ルルリ「真横と真後ろには人が座らない」
ルルリ「と割り切るから出来る設計よね」
ミリア「日本の車も怖い気がしてきた」
ルルリ「ドアに寄りかかってたら」
ルルリ「外れて飛んでった、とはならないでしょ」
クロエ「うちのも飛んでかないよ!」
ルルリ「大人が全力で寄りかかっても?」
クロエ「そんなことしないからわからない」
ルルリ「する必要が無いものね」
ルルリ「寝てりゃ着くんだから」
クロエ「たしかに」
ルルリ「そしてフレームは頑丈なんでしょ」
ルルリ「最悪屋根が吹っ飛んでも死なない」
クロエ「そんな事故は一回もありません!」
ルルリ「アメリカではあったのよ」
ルルリ「屋根が吹っ飛ぶEVの新車」
クロエ「うええ」
ミリア「スポーツカーかな?」
ルルリ「落ち着いて考えると合理的だわ」
ルルリ「でもこれは日本では売れないわね」
クロエ「輸出はしないことになってる」
ルルリ「枢里で作らなかった理由も同じだわ」
ルルリ「フワシコだから成立する車なのね」
クロエ「だから非公開なんだろうね」
ルルリ「日本じゃなければここまで出来るか」
ルルリ「法律の壁が恨めしいわ」
クロエ「やっぱり枢里も独立しないと」
ミリア「まちごと引っ越せればいいのにね」
ルルリ「枢里を空に浮かべましょう」
ミリア「ふわふわだ」
ルルリ「センサーも見せて貰っていい?」
クロエ「いいけど説明は出来ないかも」
ルルリ「だいたい想像つくから大丈夫」
ミリア「想像できるものなの?」
ルルリ「運転する時に見るのは」
ルルリ「前と横と後ろでしょ」
ミリア「そっか」
ルルリ「赤外線か電磁波か」
ルルリ「あとはそれを補う細かい仕組みね」
ルルリ「GPSは使ってない気がするわ」
クロエ「わからん世界に入ってきた」
ルルリ「磁気センサーだわ!」
ルルリ「なるほどなるほど」
ミリア「わかりやすく説明してください」
ルルリ「決まったところしか走りません」
ルルリ「前の車や障害物と距離を取ります」
ルルリ「駐車場に入ると空きを探します」
ルルリ「仕組みはこれだけね」
ミリア「好きな所に行けないの?」
ルルリ「最初に行き先を入れるのよ」
ルルリ「あとは道路の磁石をなぞるだけ」
ミリア「磁石なんだ」
クロエ「確かに工事してたな」
ルルリ「フワシコなら全部の道路に埋められるし」
ルルリ「車側のコストは削減できるからベストね」
ルルリ「今の自動運転は画像解析してるから」
ルルリ「センサーも高いし処理も重い」
クロエ「とりあえず良く出来てるって事だな」
ルルリ「参考に出来ないのが残念だけどね」
ミリア「日本の法律があるから?」
ルルリ「それもあるけど、まちのつくりの違い」
ルルリ「フワシコは経路がドーナツ状なのよ」
ルルリ「だから行き方が複雑にならない」
ミリア「枢里は道路いっぱいある」
ルルリ「碁盤の目だから判断が必要になるの」
クロエ「少ない方がわかりやすいのか」
ルルリ「停止と右折渋滞を減らすのが基本よ」
クロエ「車だけの問題じゃないんだな」
ルルリ「道路あっての車です」
ルルリ「フワシコ車の真価は走行ではないけど」
ミリア「みんないつも寝てるの?」
クロエ「PCする時は座席に移るよ」
ルルリ「助手席がパソコンデスクになるのね」
ミリア「電気はどうするの?」
クロエ「EVだから車から取れるんだよ」
ルルリ「家の消費電力より大きい蓄電池なの」
ミリア「ネットは無線か」
クロエ「LTEとWi-Fiだよ」
ルルリ「枢里と一緒ね」
ルルリ「映画とかはPCで見てるの?」
クロエ「ベッドに寝て天井をご覧ください」
ミリア「スペースリアリティだ」
ルルリ「これはプロジェクターね」
ミリア「映画館にもなるんだね」
クロエ「ヒロバにもシアターあるけどね」
クロエ「一人二人で見たい時はこっち」
ルルリ「これを恋人同士で見るわけね」
ルルリ「ベッドが汚れたら洗濯できるの?」
クロエ「コンビニの機械で洗えるけど」
ミリア「車は二人で乗るの?」
クロエ「そうなんだよ」
クロエ「四人家族でも二人ずつになる」
クロエ「おっと、紹介はここまでかな」
ルルリ「もっと詳しく聞かせて頂戴」
ミリア「しめよう」
ルルリ「フワシコの魅力に迫ってみました」
ミリア「明日はコメント返しやりまーす」
クロエ「ドーモ、マタータ!」