155HIT。そんなに減ってない。
おそくなりました。
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「雄介……お姉ちゃんは、今でも貴方のことが……」
「ぼ、僕だって、姉さんが大好きだ……」
「今だけでいいの……名前で呼んで……」
禁じられた愛ほど蠱惑的なものは無い。
名前を呼びあう二人の唇が触れる刹那。
「お兄ちゃん……何してるの?」
帰宅した妹の悲鳴。
「妹のほうが可愛いのに!」
続いて僕の悲鳴。
飲みかけのお茶を取ろうとしてひっくり返した。
「ユースケ、何してんの?」
「姉ちゃんこそ、いつのまに」
守った漫画雑誌を後ろ手に、濡れた所を拭く。
「エロ本?」
「ちゃうわ!」
ある意味、エロ本より気まずいが。
「姉さんが大好き?」
「なんだよ唐突に」
「あ、ごめん、まだ読んでないか」
「いや読んでひっくり返ったとこ」
姉は読者だった。
恋愛漫画は元々姉の趣味だ。
「ユースケそっくりよね。優柔不断で鈍感。見ててイライラするわ」
同感だったが、余計な一言のせいで同意できない。
「いや姉はありえないでしょ。もう妹と付き合ってんだし」
「じゃあ断ればいいじゃん」
「僕に言われても」
ユースケ違いだ。僕は勇介。
「うちのユースケは付き合えたの?」
「彼女欲しいなあ」
「相談所、行ってないの?」
「あそこは魑魅魍魎だよ」
「何人と会った?」
「二人」
あの一週間後、二人目と会って断られている。
「ヤバい?」
「教育ママみたいな人でさ」
子育て志望。年下。条件には合っていた。
小遣い制も家のローンと学費の積み立てだと言うからまだ理解できる。
しかし、恋愛漫画は止めて欲しいと言われたのが少し不快だった。
ブランド物の鞄や服を集めるタイプにも見えなかったので言い返せないが。
「振られちゃったけど、ホッとしてる」
自信は無くしたが、不思議な安心感があった。
頑張ったけどダメだったんなら、独身で仕方ないか、と。
「甲斐性無しか」
「そういう時代じゃないんだよ」
「女の本音は変わらないって」
だとしても、男の立場はどんどん変わっている。
「合コンするなら来る?」
「マジか行く」
「男連れてきてね」
「あーでも姉さんの友達は勘弁。年下派だし」
「アラサーだわ。年下の友達」
「姉さん大好き」
「ただし」
姉はおかしな注文をつけた。
「一番美人な子には絶対に惚れないこと」
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