03/10ページ
「アタシは中性法って良くないと思うんですよねー」
初めての紹介相手は、挨拶が終わるや否や、そんな話題を切り出した。
「男は仕事、女は家庭。二人がいいなら、それで良くないですか?」
「そうですね」
相槌は控えめに打ったつもりだが、内心は同感だった。
なぜ国は個人の問題に干渉したがるのだろう。
男がカッコよくたって、いいじゃないか。
「仕事がデキる男って、カッコいいと思うんですよ!」
そうだよな!
年収650万は十分頑張ってるじゃないか!
そういう所を認めてくれる人のほうがいい。
「よろしくお願いします!」
「話がわかりそうな人で良かった!」
相手は希望に沿わず年上だった。現在はパート勤め。
でも、男を立ててくれるタイプなら。
と思った矢先。
「専業主婦志望なんですが、家事は分担で大丈夫ですか?」
「はい?」
何を言われたのか一瞬理解出来なかった。
一言で矛盾している。
「そのはいは、大丈夫ということで」
「いえいえ!」
間髪入れずに押し切られそうになるので何とか言葉を練る。
「専業主婦として家事を担当されるという事でしょうか」
出来るだけ相手の言葉を崩さないように言い直してみた。
「家計の管理はアタシがやります」
「それって、お小遣い制にするってことですか」
「食費と交際費を必要なぶん渡すってことです」
余計厳しい。
僕は悟った。この人は恐らく口が達者だ。
百戦錬磨の婚活猛者なのかも知れない。
逃げ出したい。
なんとか穏便に済ませることは出来ないだろうか。
A.「僕、脱サラしてチキン屋を開きたいんです」
B.「僕、オタクなんでめっちゃカネ使いますよ」
C.「あ、ママが呼んでるからすぐ帰らなきゃ!」
しかし僕は、嘘がつけない性分なのであった。
現実は非情である。
観念して交際を始めるしかないのかと思ったその時、
苦し紛れに口にした一言が、初体験を強制終了させた。
「僕、どうしても、子供が欲しいんですけど」
◆
「子作りを強要された、と、クレームが入りました」
「すみません」
やり手の担当さんに絞られる。
「まさか、無理矢理迫ったりしてませんよね?」
「とんでもないです」
「隠し条件に、子供が好きだと追記しておきます」
「隠し、なんですか」
「今は法律が厳しいので」
少子化対策はどうなったんだ。
1000文字