セリカ宣言

掴み

伝説のお嬢様「三剣芹香(みつるぎ・せりか)」

彼女は解体された財閥である三剣家が作った企業城下町「枢里(くるるさと)」を受け継ぎ、
バブル崩壊後のリストラを乗り越えて、社員7万人の暮らしを守ったという。

その象徴として、1998年に行われた「セリカ宣言」は、今も枢里に語り継がれている。

・株式会社三剣枢里(持株会社)を設立する
・全住民の終身雇用(定年まで)を保証する
・労働時間は原則週24時間(週4日、1日6時間)とする
・生活必需品の物価を固定し、給与で必ず購入できるようにする
・18歳までの子供全員に生活費を支給する
・18歳になった子供全員に就職の内定を出す
・全員が株主になれるようにする
・これらの目標を果たすために、完全な自給自足を目指す

しかし、住民の給与や設備投資をセリカの私財で補う運用が続き、
セリカ宣言の本質である「自給自足」を果たすことが出来ないまま、
2020年を迎えることになってしまった。

セリカの一人娘、三剣アリアは、枢里を残すことが出来るのか。

詳細

・基本給を終身保証する
 ・しかし、その基本給とは、月給8.8万円である
  ・手取り7.5万円になる
  ・推奨する専門資格を取ると時給33%アップ(先着順)
 ・労働時間は週24時間(週4日、1日6時間)である
  ・希望者は週5日勤務可能
  ・忙しすぎる人と仕事が無い人に分かれないように均等に割り振る
   ・全員が週3日になることはありえるが、その場合は手取りは下げない
・生活に必要な物価を固定する
 ・給与1円を2クルルに交換出来る
 ・月10万クルルで最低限の生活が送れるようにする
  ・そのために住民に「自給自足」労働の義務を課す
  ・商品の価格を上げないために住民が商品を生産する
・全員が戸建てに住めるようにする(将来の約束)
 ・コンテナハウス
・18歳までの子供全員に月10万クルルを支給する
 ・国の子供手当が月5万円に満たない場合、枢里で充当する
 ・子供の財布と親の財布を分ける
  ・子供を何人産んでも親の財布が痛まないように
・子供は18歳で枢里社員として採用
 ・自給自足しながら高校と大学を卒業できるようにする
・これらを実現するために、枢里は経済的自立を果たす
 ・当面はセリカの株の儲けで何とかする

ミリアは政治が出来ない。

   Posted on 2021年1月29日 by me in 小説執筆 

でも失敗させると可哀想な感じになって書けない。

発端

二剣世界のベースにならんかなー。

スタート地点は失業だ。
失業は産業革命の成果であり、文明の発展の証拠だ。

後進国は安月給だが雇用がある。
先進国は生活が豊かだが雇用が無い。

コメを作れば1キロ341円で売れる。国内価格なので海外には売れない。
しかし、コメを輸入すれば1キロ44円で買える。
(後にコメの相場があがると1キロ122円になるがそれでも安い)

食糧自給率を確保するために、
コメの輸入をやめて、国民に給料を与える口実として、労働させましょう、と決める。
これは封建時代と親和性があるので支持されやすい。

ところが現実に産業は発展しているので、
農家を継ぐより工場で働いた方が儲かることになり、
工場で働くよりオフィスで働いたほうが儲かることになる。

セリカは「出来るだけ多くの住民にオフィスワークを与える」ことを目標に、
IT受託の仕事を取ってくるようにした。
工場の仕事もあるし、小規模農家の仕事もある。
この上でオフィスワークはやだ、もっと儲けたい、と言われれば、
みんなで必死こいて投機の世界に突っ込んで走らないといけなくなる。
三剣株の持ち株制度から運用に回すようにする。信用取引は禁止する。

結果として、投資に失敗する人や、自分の仕事を全うできない人が現れる。
セリカがクリエイターを奨励しても同じで、売れないのは仕方ないとしても、
期日までに規定数の納品が出来ない人は現れる。

職業選択の自由は一回限り。新卒カードを使った入社時だけだ。
あとはうまいことやらないと不本意な仕事をする羽目になる。
会社都合退職であっても、これは変わらない。
そして三剣グループであっても、企業の廃止は起こりうる。

それが嫌なら、すなわち、転職を自由にしたい、
三剣グループの中で所属する会社を自由に移動したいのであれば、
終身雇用の廃止による解雇自由化を受け入れないといけなくなるが、
職を失って路頭に迷うのは嫌。
待遇は良くして欲しいし、安定はしたい。この問題をどう解くか。

セリカは「機会平等」によって不満を和らげようとする。
とても嫌な仕事をする人と楽な人が偏るのではなく、全員が少しずつ嫌な仕事をする。
そうすることで、いざという時に稼働可能な人数も確保できるが、
平時には労働効率が低くなる。適材適所の逆だからだ。

ミリアの失敗例の話をしよう。

ミリアは全住民に対して、
「働きたいのか、働きたくないのか」を聞く。
多数決ではなく、一人ずつ聞く。

「全員が働きたくない」のなら、ミリアも理解しやすかろう。
出来るだけ必要な仕事の絶対量を減らし、それを均等に割り当てて、
「みんなで頑張って効率化して、もっと働かないで済むようにしましょう」
と言えばいいのだから。

しかし、実際には、働きたくない人のほかに、
「働きたいし、働かない人がサボっているのは許せない」
というタイプの意見がそれなりに多いことを知った。

「他の人のことはいいから、自分のことだけを答えてください」
と言っても嫌がる。

「働くか働かないかは自由に決めるのじゃダメなのかな?」と聞くと、
「誰も本当に働かなかったら枢里が破産してしまう」
「みんなで頑張って働くことを勧めて欲しい」と言われる。

しかし、枢里の経済は、実際には「高度人材」という特権階級の人がいて、
その人の働きによって、全体の7割以上の成果があがっている。
製薬会社の研究員、大規模農家、教育コンテンツ制作者など。
住民に与えている「IT受託」の仕事は、売り上げ規模が小さいので、
みんなが実はやりたくないのならやめても差し支えない程度のものだった。
(国内にIT企業がそれなりに浸透して価格競争が始まったせいもある)

・一般家族 時給900円
・専門社員 時給1200円
・高度人材 時給4000円以上(歩合制)

かといって、みんなが大金を稼げるように必死で働くわけでもない。
奨励している資格取得すら未達のものが多いし、
手が出しやすくて歩合制のネットビジネスも成功者がほとんどいない。
そういうのじゃなくて、毎日ちゃんと出社して、
汗水たらして働けば豊かになれるような人生のイメージをしてるようだ。
セリカはそれに「福祉」で答えた。給料は下げた。
時給900円の価値しかない仕事に900円以上の報酬は出さない。
でも、ミリアはそれをうまく言えるほど要領が良くない。
だから、「みんなで、週4日、1日6時間、頑張って働きましょう」と言う。
そうやって、イデオロギーという概念を学んでいくのであった。

セリカは母親と別れる時に、住民に宣言をぶちあげている。
恐らくその宣言がセリカ最大の仕事であり、セリカ時代を象徴している。

思想

セリカの思想は「生活の安定」を目的としており、他意は無い。

・どうして自給自足なのか
 ・輸入品の値段が上がったので生活出来なくなりました、では困るから
 ・輸入品の値段が上がらないようにし続ける努力をするのはあまり平和的ではない
  ・枢里の軍事を放棄する気は無いけど繊細な話題なので話せるのはここまで
   ・枢里では無人戦闘機を研究している。ドローンとか。ラッカも実はそう。
・どうして社員限定なのか?
 ・生活に必要な労働をゼロにすることが出来ていないから
  ・ロボットがロボットの面倒を見れるようになったら人間は一切働かなくて済むかも
  ・人間は働くべきだ、とか、労働から解放されるべきだ、という思想は無い。出来るならやるだけ
 ・人口増のためには食糧が必要で、食事のために土地が必要で、土地を得るには大金が必要だから
  ・7km2の農地と3km2の住宅地と1000億円の資金があれば人口14000人の「枢里互換」の集落は作れると言う
・どうして安月給なのか?
 ・生活のためにカネをかけないほうが独立性が高まるから
 ・常に大儲けすることによって生活を安定させる方法もあると思うが失敗すると立て直しづらい
 ・収入を増やすには個人がバラバラに金融活動をするのは効率が悪い
  ・才能の発掘のための投資だとすれば割り切れるかも知れないが、そこは歩合制度を使って欲しい
・どうしてインフレやデフレを起こさないのか
 ・景気に応じて生活が良くなったり悪くなったりするという感覚を無くすため
 ・生活水準を下げたくないので、背伸びもあんまりしたくない
 ・豊かになって食事量がどんどん増えたりすることは無い。食事は栄養学的な根拠で計量される。
 ・技術の発展などにより生産品の質が底上げされる可能性はある
  ・自動運転が普及したら運輸の仕事は無くす
 ・税金がかかるものについては神経質に取り扱っている部分はある
  ・自動車は高級品
   ・安くなったら積極導入する可能性はあるが、要るか?
  ・タバコには厳しい(完全禁煙なので中毒者は転入を断られる)
  ・枢里はどぶろく特区
   ・食堂では安く販売されている(食堂か自宅で飲まないといけない)
   ・アリア祭りでは振る舞われる(お嬢様のお祭りなのに・・・)
  ・それで自動車もEV化が進んだ(ガソリン税払いたないから)
  ・税金ではないけどテレビを廃止したのも同じ理由(ネットも)
・注文住宅には住めないのか
 ・みんなが自分で建設できるなら住めるし、職人を雇わないといけないなら住めない
 ・土地の残りは少ないけど、気持ちとしてはログハウスとか自作の家づくりは応援したい
 ・単にコンテナハウスに不満があるなら改善のリクエストとしてメッセージを送って欲しい
・どうして子供手当が手厚いのか、産むことを推奨していると考えて良いか
 ・産むことを推奨しているわけではない
  ・産んでも産まなくてもどっちでもいいと考えてください
 ・枢里の合計特殊出生率は、2.3に達している
  ・みんなちょっと産みすぎ(笑)
  ・セリカ宣言から2020年までの22年間の参考値として、15歳から39歳までの値を出している
   ・40歳以上の夫婦に高額な不妊治療を進めるなどして人口を増やそうとはしていない
 ・子供の経済力が親に依存しないように独立させることが狙い
  ・お金ないから中絶する、みたいな選択を避けたい
  ・孤児院もあるので活用して欲しい
 ・人口が増えすぎると枢里が破綻するのは事実だが、あと80年は大丈夫
  ・その間に土地問題が緩和されれば・・・
  ・一度枢里を出た子が戻ってくる時にも転入制限があるので気を付けて
   ・社員証を持たない枢里住民として枢里の社会問題になりつつある
・枢里は共産主義を目指しているのか
 ・旧来の言葉で括ることは誤解が生じるのであまり好ましくない
  ・マルクス主義なのかどうかとかも
 ・が、枢里の暮らしの目指す先が資本主義でないことだけは断言できる
  ・資本主義そのものを否定するわけでも、セリカが個人的に忌避しているわけでもない
   ・が、一人の金持ちが未来永劫お金を貢ぎ続けて成り立つ街はあり得ないのだ


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Last-modified: 2021-02-27 (土) 02:17:37