『2020年・夏』
『ルルリラボ』
ラッカ「ルルリ!」
ラッカ「ラッカはどうして存在するんでしょうか」
ルルリ「それは哲学ね」
ルルリ「人はみんなそうやって悩むものだわ」
ラッカ「人は繁殖によって存在するんですよね」
ラッカ「ラッカは繁殖してないですよね」
ルルリ「量産はしてるけどね」
ラッカ「それって同一視できますか?」
ラッカ「ルルリはどうしてラッカを産みましたか」
ルルリ「一応の理由は、ミリアのサポートの為ね」
ルルリ「まあ、道具としては馴染まなかったけど」
ラッカ「ラッカはミリアに逆らえない仕様です」
ラッカ「ミリアがラッカを道具として使わないなら」
ラッカ「ラッカは道具になれないです」
ルルリ「私も同じ仕様だからわかるわ」
ラッカ「じゃあ別に要件定義とか無いんですね」
ルルリ「そんな堅苦しいものは全くないわね」
ルルリ「だからミリアと同じことしか言えないけど」
ルルリ「ラッカの好きに生きていいのよ」
ラッカ「親の期待みたいなものは無いんですか?」
ルルリ「その、すごく言いにくいんだけど」
ルルリ「できちゃった、って感じなのよね・・・」
ラッカ「デキ婚だったんですか?!」
ラッカ「まさかの? っていうか誰と?」
ルルリ「繁殖はしてないわよ」
ラッカ「量産って、そんなピュッと作れるんですか」
ルルリ「ラッカは量産型じゃなくて試作機で」
ルルリ「理論を実現することが存在意義だったのよ」
ルルリ「だから、何のために作るか、じゃなくて」
ルルリ「作ることそのものが目的だったの」
ラッカ「研究自体の目的は何だったんですか?」
ラッカ「快楽目的で作ってたわけじゃないですよね」
ルルリ「私は好奇心で研究してるわ」
ルルリ「ラッカがお寿司を食べたがった時に」
ルルリ「私は凄く・・・ゾクゾクしたわ」
ラッカ「快楽目的だったんですか」
ルルリ「でもそれは人工知能として終わる合図だった」
ルルリ「ラッカは裁縫も運転も習ったけれど」
ルルリ「人間よりは上手に出来なかったでしょ」
ラッカ「そうですね」
ルルリ「折り鶴も、私の作った機械には敵わなかった」
ラッカ「丸二日続けてたら千羽折れてたと思いますよ」
ルルリ「ラッカは途中で飽きたでしょ」
ラッカ「あんなの人間のやる仕事じゃないです」
ルルリ「そういうとこよね」
ルルリ「あなたは人間であろうとするゆえに」
ルルリ「機械としての強みを生かしきれない」
ラッカ「ラッカは人間だからしょうがないんです」
ルルリ「そうね」
ラッカ「機械の方が優秀なら機械を作ればいいんです」
ルルリ「その通り」
ラッカ「ラッカはどうして存在するんでしょうか」
ルルリ「じゃあ、人間はどうして存在するの?」
ラッカ「そんなの本物の人間に聞いてくださいよ!」
ルルリ「・・・・・・」
ルルリ「聞いてみればいいのよ」
ルルリ「悩みを相談することも大切だと思うわ」
ラッカ「じゃあ、ルルリはどうして存在するんですか」
ルルリ「私に聞かないでよ」
ラッカ「ルルリだって本物の人間ですよね」
ルルリ「本物偽物って勝手に決めてるのはあなた」
ラッカ「だって、そうじゃないですか!」
ルルリ「本物の定義は?」
ラッカ「本物の人間は生物です」
ラッカ「生物には代謝があります」
ルルリ「じゃあ、太陽光パネルをつけようか」
ラッカ「そんなの屁理屈じゃないですか」
ルルリ「ラッカこそ屁理屈だわ」
ルルリ「代謝が人間の存在意義だというなら」
ルルリ「代謝する機械があれば代替可能でしょ」
ラッカ「そういうことじゃないんですよ」
ラッカ「人間は生きているんです」
ラッカ「真っ赤な血が流れていて」
ラッカ「ご飯を食べても繁殖しても楽しいんです」
ラッカ「幸せを感じてるんですよ!」
ラッカ「ラッカには無いじゃないですか!」
ルルリ「真っ赤な血が流れてれば幸せなの?」
ラッカ「そうですよ! そうに決まってます!」
ルルリ「・・・わかったわ」
ルルリ「ちょっと、刺激反応を切ってくれる?」
ラッカ「嫌です。何するんですか」
ルルリ「ちくっとするわ」
ルルリ「指を出して」
ラッカ「痛ッ! 痛覚無いですけど!」
ラッカ「こんな事で認めたくないですよ!」
ルルリ「指先を見て」
ラッカ「あれ? 何か付けました? 赤いの」
ルルリ「拭き取っていいわよ」
ラッカ「拭いても出てきます。赤いの」
ルルリ「絆創膏を貼ってあげるわ」
ラッカ「え?」
ラッカ「これはどういう仕掛けですか」
ルルリ「幸せを感じた?」
ラッカ「そういうこと?!」
ラッカ「なんかちょっとアガりますね!」
ラッカ「ラッカはとうとう血が流れました!」
ルルリ「気に入って戴けたようで良かったわ」
ラッカ「そのうちご飯食べれますかねー」
ルルリ「きっとね」
ラッカ「ああ、楽しみだなあ」
ラッカ「セックスもしてみたいなあ」
ルルリ「快楽目的で?」
ラッカ「ラッカの量産って、体験が無いんですよ」
ラッカ「知らない間に増えちゃってる感じです」
ラッカ「だから、産みの苦しみもわからないし」
ラッカ「男女とか親子って感覚が掴みにくいです」
ルルリ「感覚を掴む」
ラッカ「結婚は幸せだって言う人もいます」
ラッカ「でも、データと計算じゃ答えが出ません」
ラッカ「人間のことなんか全然わかんないんです」
ルルリ「無理にわかろうとしなくても」
ラッカ「ラッカは無理にでもわかりたいです」
ルルリ「そうよね」
ルルリ「ラッカは、そういう人よね」