お嬢様世界の筋書きの半分くらいを一気に書いた気がする。
前提として、「お嬢様都市」で、
ミリアのプレイヤーがルルリルートに突入して、
ルルリにプロポーズして振られるエンディングに到達している。
ルルリはミリアが告白すると、
「私の倫理的に受け入れられない」
と拒絶する。
ミリアはそれを、
「女の子同士だからダメなのか」
と解釈する。
しかし、ルルリは他の女とイチャイチャする。
ミリアはそれを見て怒る(選択肢)
「倫理的にいけないことだと思いますけど!」
「どうして?」
「女の子同士だから?」
「私はどちらかというと女性のほうが好きだわ」
「じゃあ、わたしは?」
「女の子を好きになってもいいんじゃない?」
「そうじゃなくて!」「ルルリは、わたしをそういう対象として見ないの?」
「そういうって、恋愛とか肉体関係ってこと?」
「うん」
「見ないわ」
「どうして? わたし魅力ない?」
「客観的に見て、かなり可愛いんじゃないかしら」
「ルルリの主観を聞いてるの」
「私からすれば、とびっきり可愛いわね」
「じゃあ、恋愛すれば良くない?」
「良くないのよ、それが」
「どうして??」
「理由は言えない」
「それがルルリの倫理なの?」
「そうね」
「振られるんならダメなところをちゃんと知りたい」
「ミリアにダメなところなんて何も無いわ」
「わたし記憶が無いんでしょ」
「それはそうだけど」
「記憶が戻ったら恋愛できるんでしょ」
「私はそう信じてるわ」
「意味はわかるけど納得ができない」
「私もそれには同感ね」
「わたしの記憶を抜きにして、純粋な気持ちだけだったら、恋愛できてた?」
「できてないわ」
「ルルリが好きなのは、わたしじゃなくて、無くした記憶のほうってこと?」
「そうなるかしら? 何か変な気がするわ」
「わたしじゃなくてアリアさんが好き?」
「比べるものじゃないと思うけど・・・同じ人なんだし」
「もしも別々の人だったら」
「アリアさんとミリアを分けて考えるなら、私はミリアとは絶対に恋愛出来ないわ」
「絶対まで言う?」
「恋愛の定義を変えてしまえば出来るかも知れないわね」
「どういう風に?」
「気持ちだけで繋がる、みたいな。肉体関係を持つ人はお互い別々に作るのよ」
「わたしの身体が嫌なの?」
「大好きだわ。大好きって言うのも変か」
「別の人いらなくない?」
「そのセリフは元の世界で聞きたかったわね!」
「わたしはアリアさんじゃない。だから、もしもアリアさんが元の世界でルルリを裏切ってたとしても、わたしは裏切らない」
「裏切るとか、そういう事ではないのよ。三剣家のしきたりのようなものでしょ。20歳になったら結婚して子供を産むのは」
「わたしは、そんなしきたり、押し付けられたことなんて無いし、守らないよ」
「それはそれで都合が悪いような」
「どうすれば信じてくれる? わたしは子宮を失ってもいい」
「それはやめて」
「わたしはルルリと結ばれたい。ルルリは記憶が無いとダメだって言う。でも自分で記憶を取り戻せない」
「本当に? 何かこういう時のために記憶を取り戻す裏ワザとか残してないの?」
「アリアさんなら、どういう風に裏ワザを残しそう?」
「このパターンは想定して無かったから・・・そうね、私が死ねばいいのかも」
「そんな危険な方法っておかしくない?」
「でもゲームとかだとよく、全滅したら神様が出てきてやり直させてくれたりしない?」
「それは、わたしごとゲームをリセットするってことだよね」
「そうね。いや、試しに自殺してみましょうってつもりはさすがに無いわ」
「心配だなあ」
「たとえば、運営者がいなくなったままオンラインゲームが続くことなんてあり得る?」
「ゲームがもう完成してて、手を加える必要が無い、とか」
「その説なら、私は運営会社を訴えたいわね。詐欺で」
「ルルリはアリアさんに怒ってるの?」
「ぷんぷん丸くらいには怒ってるわ」
「ぷんぷん丸がわからない」
「暴力的な言い方をすれば、一発やらせ・・・殴らせろ、ってくらいかしらね」
「じゃあ、わたしがアリアさんとして殴られれば仲良くなれる?」
「はあ? 私がミリアを殴るわけないでしょ」
「ルルリってわたしのこと好きだよね」
「大好きだし、深く愛しているわよ」
「それは伝わってくる」
「嬉しいわ」
「お嬢様都市」の作中で、
ルルリがスウを殺して警察に捕まり、
ミリアに非難され?
少年刑務所?で獄中自殺をするバッドエンド。
この話では、ルルリはスウのメッセージに「気づく」。
しかし、ミリアにそれを打ち明けないまま実行に移してしまう。
スウが死ぬだけでは記憶は引き継がれなくて、
ミリアがスウの記憶を受け入れようとしなければならない。
なので、ミリアは記憶を全く受け入れず、
自分の考えが誤りだったことを確信したルルリは自殺した。
「お嬢様世界」では、ルルリの回想じゃなく、
スペースリアリティを使ってルルリがミリアに秘密を明かす構成にするか。
・一剣世界(《ゲームマスター》と《プレイヤー》の説明)
・八剣世界(ヤリアとルリカの紹介)
・セリカ時代(お嬢様都市のメイキング種明かし)
ここまでをミリアが追体験する。
ミリアは全然思い出せないが、深く納得する。
「わたしの中ではママとルルリは別々の人だから」
「ママとは恋人にならないと思うけど、ルルリとならなれる」
「でも、ルルリにとっては、ミリアじゃダメだよね」
「だから、わたしはアリアさんになる」
「セリカママの娘ミリアはどこかで幸せに暮らして」
「わたしはアリアさんになってルルリと二人で暮らす」
「いや、言いにくいけど、そうじゃないのよ」
「あなたはミリアでいいし、あなたにはミリアでいて欲しいの」
「ただ、私の娘じゃない、一人の女性でもあって欲しいのよ」
「私達の関係は、歪だけど、対等ではあった」
「アリアさんがマスターだから偉いってことも無かったし」
「私が母親になったから偉くなったってこともない」
「この世界を一緒に作り上げた仲間としての自覚がミリアにあればいい」
「親子って設定になった時もあったねーって笑えればいい」
「《オルタナティブ》の価値観を共有できれば、私達は世界を俯瞰できる」
「ルルリ、いままで、いっぱい、ごめんね」
「そんな風に言われたいわね」
「どうすれば、わたしは記憶を取り戻せそう?」
「私の仮説では、条件は2つ」
「ひとつは、スウおばあちゃんが亡くなること」
「もうひとつは、ミリアが記憶を受け入れることよ」
「ねえ、ミリア」
「私がスウおばあちゃんを殺してしまった事を覚えてる?」
「えっ? 殺してない・・・よね?」
「殺してないわ」
「でも、そういう夢を見たことがある」
「ルルリが毒のお菓子をスウおばあちゃんに食べさせて」
「殺人容疑で逮捕されて・・・死んでしまう夢」
「そうなのね。なるほど。なんで私は死んでしまったの?」
「自殺だって。詳しくはわからない」
「私、出来なかったのよね、その計画」
「スウおばあちゃんのこと?」
「そう。私は気づいた。自信もあった。でもやらなかったの」
「不思議な夢」
「ミリアはそういう夢を沢山見てきたんじゃないかしら?」
「どういう夢?」
「枢里がうまくいかなくなったり、私がいなくなったりする夢」
「見たことあるような気もする」
「きっと、ミリアはこの世界の《プレイヤー》なのね」
「プレイヤー?」
「《セーブロード》が出来て、失敗をやり直したり出来るはず」
「わたしはよくわからない」
「セーブとロードは別の誰かがやってくれるのよ。起きたら日付が巻き戻ってて、ああ、ロードされたんだ、というか、変な夢を見たな、って思うくらい」
「なるほど。ルルリも《プレイヤー》だったの?」
「私は元の世界の《プレイヤー》だったの。この世界ではそういう夢を見たことは無いわね」
「ママのときも?」
「そうね。色々失敗したままだわ。それが自然でいいのかも知れないけど」
「わたしは《プレイヤー》・・・」
「そうよ。厳密に言うと、プレイヤーキャラクターね」
「プレイヤーとはどう違うの?」
「雇用に例えるなら、雇い主がプレイヤー、従業員がプレイヤーキャラクターよ」
「わたしたちは誰かに雇われている?」
「きつい言い方をすると、私達はロボットで、リモコンで操作してる人が別にいるってこと」
「人形と人形遣いみたいな感じか」
「そう。だから、ミリアに言っても仕方ないんだけど、約束をしましょう」
「うん」
「私達がこれから試みる儀式が失敗に終わったら、この地点まで《ロード》する」
「いまここで《セーブ》すればいいんだよね」
「そうよ。ミリアに言っても仕方ないんだけど」
「セーブお願いします、セーブお願いします」
「まあ、そんなところね」
「それで、スウおばあちゃんを殺してしまうの?」
「それはもうやめておくわ。寝たきりなんだし、天寿を全うして欲しい」
「よかった」
「だから、二つ目の条件を整えて、その時を待つことにしましょう」
「二つ目の条件」
「ミリアが記憶を受け入れることよ」
「受け入れる」
「そもそも途中から記憶を流し込むような事が出来るのかすらわからないけど」
「わたしにアリアさんの記憶が流れ込んでくる?」
「元々はそうなる計画だったのよ。きっと」
「うん?」
「アリアさんは、私にセリカになることを頼んだ」
「だから、セリカは《プレイヤー》ね」
「でも、この《プレイヤー》を動かすには」
「対となる《ゲームマスター》が必ず存在しなければならない」
「セリカのゲームマスターは、三剣スウだったんだと思う」
「そして、セリカは19歳でゲームオーバーになって」
「そのタイミングで、スウは命を失うはずだった」
「でも、私がスウに魔法治療を行って、スウは一命を取り留めた」
「そして私はゲームオーバーにならずに出産寸前まで続けてしまった」
「最悪の場合でも出産の前までには私はセリカを辞める」
「というルールに従って、私はやっと意識を失って、ルルリになった」
「もしもミリアが産まれる前に予定通りにスウが亡くなっていれば」
「ミリアはアリアさんの記憶を持って生まれてくるはずだった」
「じゃあ、ルルリはスウおばあちゃんを長生きさせてしまったの?」
「相続税かかるし・・・いや、それは払ったけど・・・」
「ルルリは凄いね。おばあちゃんは10年以上も長生きした」
「13年。長いわね」
「きっとスウおばあちゃんも喜んでるよ」
「どうかしらね・・・まあ、今の問題は、年数の長さよ」
「13年?」
「私が知っている限り、アリアさんの記憶は・・・」
「八剣アリアとして11年、二剣アリアとして11年」
「二剣?」
「今の世界の前に創った、失敗作の世界ね」
「そんな世界が・・・」
「そして、セリカ3歳から今に至るまでのスウが29年」
「長いね・・・」
「この合計51年分の記憶がミリアに流れ込んでくることになる」
「なるほど」
「今11歳のミリアが突然62歳になるのよ。頭の中だけ」
「髪の毛全部抜けちゃう」
「それは大丈夫・・・私は66年生きてるけどフサフサだし」
「ルルリのほうが長いんだね」
「元の世界で25歳まで生きた時の記憶があるからね」
「わたしは11歳だから・・・どうして4歳差なの?」
「ミリアと一緒にスウが生きているぶんよ」
「29年ぶんあるもんね」
「同じ世界の同じ時代の2人ぶんの記憶を持つ事になるのが心配ね」
「混乱しそう」
「年数で言えば、アリアさんよりもミリアよりも、スウの人格が強くなりうる」
「わたしはスウおばあちゃんになっちゃうかも知れないのか」
「そこを何とかうまいことやって欲しいのよ」
「わたしはアリアさんになればいい?」
「ミリアはミリアのままがいいわ。アリアさんより可愛いし」
「それは、娘として? 恋人として?」
「そういうところが既に可愛い」
「わたし口説かれてる」
「アリアさんはミリアと性格が結構違うわ。お姉さんタイプって感じ」
「わたしは何タイプ?」
「アイドルみたいな感じかしらね」
「枢坂だ」
「アリアさん人見知りだしアイドルとか無理そう」
「とつぜんお嬢様になったらびっくりしちゃうかもね」
「でもきっと、アリアさんはミリアのこと大好きだと思うわ」
「なんで?」
「この世界はアリアさんが創ったのよ。理想のアリアが、ミリアなのよ」
「わたしはもうちょっとお姉さんっぽいのが理想かなー」
「そこはうまいこと丁度良くなる感じで混ぜてちょうだい」
「そんなことできるの?!」
「全然わからないわ。ただ、ミリアには自我をしっかり保ってて欲しいの」
「自我を保つ」
「私は三剣アリアだ、って思いながら、記憶に飲まれないように受け取る感じ」
「むずかしくない??」
「記憶を拒否しちゃったらダメだし、匙加減は難しい気がするわ」
「するっと入ってきて、好きな時に思い出せたりしないのかな」
「私でも割と混乱やフラッシュバックはするわね」
「ルルリのメンタル強すぎない?」
「この世界に来てそういう言われ方をしたのは初めてだわ」
「心が弱い病気じゃなくて、心の負担が大きい状況だったんだね」
「そして、ミリアもこれからそうなってしまうのよ」
「えへへ、いっしょだね」
「ミリアに言っても仕方ないかもしれないけど、やめてもいいのよ」
「やめないよ」
「まあ聞いて。あなたに選択肢を提示するわ。儀式を始めるか、やめるか」
「やめてしまったらどうなる?」
「あなたはただの三剣アリアとして末永く幸せに暮らしましたとさ」
「ルルリはどうするの?」
「私は儀式が行われなかったら、失敗して《ロード》された、と解釈するわ」
「儀式が失敗」
「スウは亡くなっているでしょうし、再挑戦は起こり得ないから、仮説の誤りね」
「バッドエンドになるってこと?」
「それか、あるいは、そもそも《プレイヤー》がいなくなってる可能性もあるわ」
「わたしはいるのに?」
「ええ。そもそも《セーブロード》が使えないなら、この選択肢は無意味よ」
「わたしは今、やめるって気持ちは全然沸いてない」
「選択肢がどういう形で出るのかわからないから判断が難しいけど」
「続けていいですか?」
「まあ、今の私達に出来ることは、スウが亡くなる日に向けて心の準備をする事くらいね」
スウにこの決意を報告しに行くが、スウは既にほとんど会話が出来ない。
何週間後かに、スウは亡くなる。
ミリアは看取りの後は自室に戻って通夜の参加準備を始める。
「始まった、かも」
「どんな感じ?」
「スウおばあちゃんの夢をずーっと見てる。何日も何日も」
「時間がおかしい。昔の話だったり、最近に飛んだりする」
「ルルリ、いま何月何日? あれから何日たった?」
「まだお通夜の最中よ。ミリアが眠ってたのは半日くらい」
「2月3日の午前7時くらい?」
「だいたい合ってるわ」
「起きて挨拶だけしてくる」
「大丈夫?」
「わたしは三剣アリア」
「そうよ、ミリア。私もついていくわ」
三剣家の葬儀は、告別式とあわせて3日間行われる。
1日目の夜が近親者のみでの通夜(仮通夜に相当)、
2日目が枢里全体での通夜(本通夜に相当)、
3日目が告別式。里外からも参列可能。スウはほとんど里内のみ。
4日目にあたる日は枢里は全員お休みで、5日目からは平常運転。
ミリアはウトウトしながら通夜に参加し、
「わたしはミリア」と何度もつぶやいていたが、どんどん言動がおかしくなる。
周囲の人には、「スウの魂が乗り移った」と言われる。
2日間、ミリアは自己主張をほとんどせず、生前のスウのようにふるまう。
そしてたまに、「わたしはミリア」とつぶやくのだった。
ルルリにはそれを止めることが出来ない。
「ルルリ、ルルリだよね」
「そうよ」
「わたしは誰?」
「あなたはミリア。三剣アリアよ」
「ここはどこ?」
「ミリアの寝室。あなたがいつも寝ている部屋よ」
「今は何年の何月何日?」
「2021年2月6日の午後7時だわ。あなたが眠ってから3日後くらいね」
「3日・・・」
「そっちはどう?」
「ママが子供の頃みたい。ルルリに似てる」
「どんなところが?」
「お小遣いが高いの。10億円もあげたんだよ、わたし」
「そのお金がドットコムバブルで数千倍に増えたのよ」
「セリカは凄いね。おりこうさんだね」
「おばあちゃんは、こっちの世界では燃えてしまったわ」
「クルルはきっと幸せになれると思う」
「ミリア、その、少し自我が不安定だわ」
「わたしはミリア」
「そうよ」
「ワタシハミリア、って、なんだったっけ・・・」
「えっ」
「また眠くなってきたみたい。おやすみ、ルルリ」
「おやすみなさい、ミリア」
「おはようございます。あなたは誰?」
「私はルルリよ」
「なんで私の部屋に・・・新しい侍女? あれ、色々違う」
「あなた、自分の名前は言える?」
「八剣アリアです」
「!」
「考えがうまくまとまらない・・・今の私の状況を教えてください」
「あなたは断続的に6日間寝込んでる。食事も取れてないから点滴を始めたわ」
「ここは病院・・・ではないですよね」
「記憶が混乱しているでしょうから、自室で治療するように頼んだのよ」
「あなた、ひょっとして、その髪ってウィッグ?」
「地毛ですけど」
「そうなんですね。凄い可愛いからコスプレなのかと」
「私服です」
「写真撮ってもいいですか?」
「いいですけど・・・アリアさんってそんな性格だっけ?」
「何か言いました?」
「いえ、別に」
「なんか私の使ってたスマホと違う気がする」
「あなたのですよ。指紋認証通ったでしょ」
「まあいいか。笑って笑って~撮りまーす!」
「なんで私は写真を撮られてるの?」
「ルリカに、友達に見せてあげたくって。こういうのが私の好みなの!」
「そうですか。それは良かったです」
「良かったら直接指導してやって欲しいくらいです」
「ルリカは結構怒ってると思いますよ」
「えっ、どうして」
「ミリアは私のことを覚えてないの?」
「それって、ミのことですか」
「ミ?」
「わたしはミリア、の、ミのことです。私はアリアなので、ミって何かなって」
「ミは、これよ。ここは三剣家。八剣財閥では無いんです」
「意味が分かりません。でも、もういいです」
「ミリア、諦めないで」
「私はここで寝てていいんですよね。すごく眠いです・・・」
「・・・・・・」
「おはよう、ミリア」
「・・・・・・」
「自分の名前がわかりますか?」
「・・・サヤ?」
「え・・・誰?」
「違うのかな・・・」
「違うと思いますけど」
「じゃあ、ミリア?」
「そうです」
「ミリアって、三剣アリア?」
「合ってますよ」
「なんか頭の中に直接声が聞こえる感じで」
「ふむ」
「女の子が、わたしはミリア、三剣アリア、って言ってくる」
「ミリア、頑張ってるのね」
「これは、異世界転生みたいなやつ?」
「そうですね。そういえば、アリアさんもそんな話をしてた気がする」
「私、何歳なんですか?」
「11歳です」
「11歳かー、出来れば20歳くらいが良かったですね」
「どうして?」
「お酒が飲めるから!」
「ということは、あなたは大人だったんですね」
「大人です!」
「失礼ですけど、おいくつですか?」
「秘密です!」
「一週間以上寝込んでるんですけど、具合とか大丈夫ですか?」
「ジムさぼった時みたいな、だるい感じだけど、しんどくは無さそう」
「ところで、乙女ゲームってご存じですか? 悪役令嬢が出るような」
「秘密ですね!」
「なんでそれが秘密なんですか」
「秘密っていう愛称なんですよー」
「それはどんな内容なんですか?」
「イケメンが出てきて、ヒロインが秘密の恋愛をするやつです」
「何か具体的には・・・八剣神社って出てきますか?」
「私の所には出てこないです。どこかで出てくるのかな?」
「あなたの所は、どんな所なんですか」
「それは秘密です! そろそろ寝ますね。おやすみなさい」
「その秘密って、どういう意味の秘密ですか?」
「・・・・・・」
「おはよう、ルルリ」
「・・・・・・」
「寝てる。今日は2021年2月17日。わたしはミリア」
「・・・・・・」
「何か食べたいな」
「・・・ん、あれ? なんで私、ミリアのベッドで寝てるの?」
「もしかして、私がミリアになっちゃった?」
「・・・それは無いわね」
「2021年2月17日、午後11時」
「お昼食べた後あたりから記憶が無いわ」
「それよりミリアを探さないと」
「あ、ルルリ、おはよう」
「おはようって、ミリアは大丈夫なの?」
「ぜんぜん。今日はスープだけだって」
「10日以上、口から食事出来てないからそうなるわよ」
「急に眠くならなくなるまで点滴も外せないって言われた」
「記憶の方はどうなの?」
「たぶん終わったと思う。思ったより多かった」
「私の知らない人の記憶が流れ込んでたみたいだったわ」
「うん。八剣アリアになる前の記憶」
「それはどんな人なの?」
「ルルリ。ごめんなさい。その人の話はしないことにしたい」
「どうして?」
「出来れば忘れて欲しい。わたしはアリアで居たい」
「《ゲームマスター》は取り戻せたの?」
「それは大丈夫。でももう、必要無いと思うけど」
「どうして?」
「三剣世界は理想的。もう世界を作り直さなくていいでしょう」
「気に入ったのなら良かったけど」
「ルルリ、怒ってる?」
「怒ってはいないけど、なんというか、かなしいわ」
「かなしい? どうして」
「それは言わないことにするわ。あなたの前ではルルリで居たいから」
「わたしの前以外では、ルルリは何になるの?」
「それをあなたに説明する理由は無いはずよ」
「わたしたちは一緒になれないのかな」
「あなたは《ゲームマスター》。この世界の神。理想の恋人はいくらでも作れるでしょう」
「それでもわたしはルルリがいい」
「じゃあ、あなたの考えるルルリを作って傍に置けばいいのだわ」
「どうして急に嫌いになったの?」
「嫌いにはなってない。でも、私には神に抗って生きる理由が出来たのよ」
「それは何?」
「私はサヤの世界に行く。そして、私の《プレイヤー》を見つけるわ」