枢里は経済的合理性を欠いているので、セリカによって補わせる。
◆
つまるところ、いままでは、
・三剣家は便宜上無限に資産を持っているものとする
・ただし、登場人物が無限の資産を当てにして行動してはならない
という緩いルールでやっていたものを、
「お金のいらないまち」というスローガンに対して、
本当に無尽蔵にお金を突っ込み続けなくても維持できるのかを精査するために、
きちんと三剣家の資産状況を明確にして検証しよう、と詳細化されただけだ。
枢里の運営にそもそもの資産が足りないのであれば設定で足すし、
「こんだけ費用かけなくても実現できちゃいます」という説明が出来るなら、
むしろそこを売りにしたいので、余計な金持ち設定は削る。
シエラは「削る」ことの象徴だ。
この設定を出した時点で、大幅に削れるという手応えがあったからそうした。
金額ベースの問題なら、三剣製薬の規模を変えて対応できる。
あとは、農機とか、海上貨物とか、欲しい事業だけを手元に残せばいい。
原発、自動車、航空など、要らないことがわかっている業種も多く出てきた。
シエラが成田の国際便規制に従うのは、国内線を守るためだ。
ルルリの《セーブロード》は、世界をまたぐことが出来ない。
当然の制約だけど、明文化してなかったので明記しておく。
この制約は厳密に言うと、「作品」をまたぐことが出来ない。
仮に、一つの作品が複数の世界をまたいだセーブを提供できるなら、
世界をまたぐロードは実現可能である。
「お嬢様都市」には三剣世界しか収録されていない。
鯖江市の地価は1995年から2020年にかけて、およそ1/3になっている。
12万円から4万円弱に。
ということは、「枢里の土地を全部買い上げる」という当初設定自体が不利だ。
そして、地価が下がる前に資産の分割を申し出たシエラが正しいことになる。
消費者米価、米の相対取引価格も下がっている。
食糧自給率を維持する努力は、まったくの大損ということになる。
1995年に米国株に投資して、ITバブル崩壊前に逃げ出して、
バブルが崩壊したら底値を漁って、リーマン・ショック前に逃げ出して、
民主党政権が終わったら株を買い直して、あとは株で持っているのが良い。
枢里の土地を買い戻すんなら2016年以降がちょうどいい感じ。
「未来を知っている主人公が大資本を自由に動かせる」なら、そう動く。
ということは・・・
セリカはシエラに打診をする。一芝居打ちませんか、と。
そして、三剣家と枢里の分割案を提示する。
「これから土地の価格は下がり続けるが、枢里は土地を売ることが出来ない」
「今の価格で資産の分割を提案し、三剣グループを守って欲しい」
「枢里には私が残るし、従業員6万人も私が面倒を見る」
「枢里の維持のために、三剣製薬は枢里に残して欲しい」
「お母様に渡る資産の価額は12兆円」
『国民全員に10万円配ったらすぐ無くなるような金額だわ』
シエラ「そうやって実は枢里や三剣製薬が大当たりするとか?」
セリカ「あはは、じゃあ、逆にしましょうか?」
セリカ「どちらでもいいわ。私はケーキを2つに切る」
セリカ「お母様は食べたい方を選んで頂戴」
セリカ「私はどうしても枢里に残らないといけないのよ」
そうやって三剣グループを逃がし、
枢里以外の資産を売却して得た資金でIT投資を進める。
「米国のITバブルってどうして崩壊したんだったかしら」
「光通信・・・って、それは国内か」
「9.11は関係ないわよね・・・?」
「まあ、2000年中に売ることにしましょう」
「リーマン・ショックは確か2008年ね」
「2007年に一旦売りましょう」
「雑だけどまあいいわ」
ルルリの正体は、シエラにもバレる。
シエラ「またケーキを持ってきてくれたのね」
ルルリ「いいえ。今回のは、三剣家全員の持ち出しです」
ルルリ「《風邪薬》を売って稼ぐことは出来ない」
ルルリ「単純に、国内の経済と、人の命を守るだけです」
シエラ「どうしてそんなことを?」
シエラ「三剣製薬なら儲ける事も出来るでしょうに」
ルルリ「予防薬が作れたなら売ったでしょうけれど」
ルルリ「感染させてからワクチンで儲けるのは不本意だわ」
ルルリ「まあ、作れないから《風邪薬》なのでしょうね」
シエラ「それで、私にどうしろと?」
ルルリ「成田をお願いします」
これで、「経済モノじゃないけど経済の話を巻き込む」内容としては、
ギリギリ溜飲が下がるレベルまで不快感を取り除けたと思いたい。
時価12万円/m2の50km2は6兆円。
三剣製薬その他を足しても12兆円には満たない。
それだけ三剣グループが儲かってたってことになる。高度経済成長期すげー!
東証一部の時価総額が1995年で350兆円くらい。今は倍くらい。
1995年に24兆円規模の大企業グループがあると、全体の7%くらいの存在感だ。
枢里は非上場なので、上場してる株式に限るともっと割合は少ない。まあ大丈夫かな。
無茶な規模感じゃないことが確認出来れば、とりあえずいいことにする。
セリカは3兆円くらいの資産を運用して枢里投資を続けつつ資金繰りが出来ていれば良い。
シエラとの取引は、セリカが動かせるカネを作ることがもう一つの目的だったのかも知れない。