おかねのしくみ改。
Posted on 2021年1月19日 by me in 小説執筆
ルルリが仮想通貨じゃなくなった。
◆
ミリアが「ミリア銀行券」を発行する。
額面10ミリアの紙幣。
これをクラス20人に毎日10枚ずつプレゼントする。一人100ミリア。
ミリア銀行は毎日2000ミリアを発行することになる。
三剣家は毎日2000円ぶんのお菓子を用意している。
タケル「つまり、毎日100円ぶんお菓子をくれるってことだよな」
と、好きなお菓子を100円ぶんさっさと選ぶ人もいれば、
カイン「これって使わずに貯めたらどうなるのでしょう?」
と、あえて交換しない人もいる。
何日かすると、「人気のあるお菓子」と「人気の無いお菓子」に差が出来始める。
人気のあるお菓子を素早く買って、買えなかった子に高く売りつける子が現れる。
タケル「150ミリアなんて持ってねーよ!」
カイン「明日、不足分を払ってくれればよろしいですわよ」
「お嬢様、どうしますか?」
ミリアは「明日は人気のお菓子を多めに用意するから待ってて」とアナウンスする。
転売は落ち着いたが、人気の無いお菓子は買われずに残る。値下げしても売れ残る。
次第にミリアを毎日使い切る人と、結構余らせてる人に分かれてくる。
ミリア「もっと欲しくなりそうなものを色々用意してみよう」
と、おもちゃを商品に入れ始めることにする。
おもちゃも、売れるものと売れないものがハッキリ分かれてくるようになる。
ルルリ「このビー玉、いくつ売れたの?」
ミリア「一個も」
ルルリ「これ、沢山欲しいって言ったら用意できる?」
ミリア「できるよ」
ルルリ「全部買うわ。毎日100ミリアぶん売ってちょうだい」
次第に良いおもちゃが並び始めるのを確認すると、
自分で買ってきたお菓子を売ってミリアを稼ぎ始める子が現れる。
カイン「大人気のお菓子、うちでは90ミリアで販売いたしますわ」
「お嬢様、どうしますか?」
ルルリ「もう、おしまいにしたら?」
ミリア「いま、ミリアの価値は上がってるんだよね?」
ルルリ「上がってるわね。ミリア高お菓子安よ」
ミリア「つづける」
三剣家がお菓子を90ミリアで売ると、カインは80ミリアに値下げしてくる。
そうしてお菓子の価値が半分になり、とうとうミリアは根負けする。
ミリア「お菓子は100ミリアに戻します」
カイン「じゃあうちは90ミリアにしますわ」
タケル「実質値上げだ! 横暴だ!」とミリアはなぜか批判を受ける。
この時点で開始から20日が過ぎていて、
カインは全発行40000ミリアのうち、15000ミリアを集めている。
5000ミリアは他のクラスメイトが保有しており、20000ミリアは銀行に戻ってきている。
ミリア「最新ゲームソフト。6000ミリア。1個限定」
これは、カインの貯蓄を吐き出させるために用意した餌だったが、
カイン以外のクラスメイトが大騒ぎになってしまう。
タケル「あれ品薄で手に入らないって話題になってるやつじゃん!」
ハヅキ「森なら近所に沢山あるのに、どうして人はゲームに森を求めるのだろう」
タケル「くそー、こんなことならお菓子我慢しとけば良かった!」
そして、カインは手を出さない。
次の日、カインはお菓子を50ミリアで販売するが、ほとんど売れない。
もちろん、三剣家が用意したお菓子も手付かずになっている。
ミリアを手に入れるためにあの手この手で取引が始まっている。
ルルリはマイペースにビー玉を買いためている。
タケル「4人で話し合って、頭金2000ミリアと、向こう10日分のミリアを支払う約束をした」
タケル「借金4000ミリアってことだ」
タケル「これで全部で6000ミリアになるけど、あのゲームを買うことは出来るか?」
ミリアは悩んで許可しようとするが、ギリギリのところでカインに即金で買われてしまう。
カインはこれを「9000ミリア。借金応相談」と書いて展示する。誰も買えない。
タケルは「三剣家でもう一個用意してくれ」と懇願する。
ミリアは何とかもう一個の在庫を用意する。
ミリア「5000ミリア。ただし中古品。支払い条件は交渉可能」
しかしこれは、タケルとカインと、それ以外のクラスメイトも交えた大交渉に発展してしまう。
カインはオークション形式を提案する。
ハヅキはカインに「既に一つ持ってるんだから身を引くべきだ」と指摘する。
そこでカインは、自分の持っているゲームをオークションに出す。
カインの出した新品の「森」は、10000ミリアでタケルが落札する。
もう一本用意された中古の「森」は、8000ミリアで別のクラスメイトたち5人が落札する。借金だ。
これ以上のトラブルを避けるため、ミリアはタケルたちの借金をミリア銀行が引き受けると宣言する。
カインには即座に10000ミリア支払われ、ミリアは頭金2400ミリアを受け取り、
残りの7600ミリアを4人で1900ミリアずつ19日かけて受け取るように約束する。
別のクラスメイトは最長16日の借金返済をすることになった。
カインの所持金は19000ミリアに達している。
ここでミリアが、ゲーム機本体と引き換えに全ミリアを回収する打診をするが、カインは拒否。
クラスの約半分9名が借金のためにミリアを得ることが出来ず、
残りの半分11名も今更、お菓子を100ミリアと交換する気にならない。
市場が停滞したまま、1日100ミリア支払うという約束だけが遂行されていく。
と思ったところで、ルルリが宣言する。
ルルリ「私は新通貨《ルルリグラス》を発行することにしたわ」
ルルリ「ルルリグラスは、偽造防止の特殊なインクで私がサインしたビー玉よ」
ルルリ「小学校の建物と裏山に200個隠した」
タケル「ルルリは何に使えるんだ?」
ルルリ「それは考え中。いい使い道が思いついたら教えてちょうだい」
待っていても収入が得られない借金組は、宝探しを始める。
三剣商店では珍しく、スコップのおもちゃが売り切れた。
ルルリグラスを見つけた子は自慢げに成績をアピールする。
見つからなかった子や参加しなかった子は、「そんなビー玉なんて何の価値も無い」とバカにする。
カインは内心モヤモヤしたものを感じたが、
せっかく独占状態にあるミリアをルルリと交換する事は気が引けた。
ルルリグラスがだんだん見つかりづらくなってきた頃、
借金組の返済期間が終わり、再び市場にミリアが増え始めるようになった。
もはや、ミリアの価値は誰もが信じて疑わなかった。
三剣商店は、品薄の森じゃないにせよ、「人気ゲームソフト」を置くようになったし、
三剣商店がお菓子さえ置かなくなる可能性なんて誰も考えていなかった。
そもそも、ミリアが気まぐれに「おしまいにしまーす」と言えば終わる遊びなのだが、
カインが大量のミリアを保有しているため、閉店セールをして畳むことも道義的には難しい。
そして、みんながミリアを使い切ることも無くなった。
お菓子は20ミリアや30ミリアで買える駄菓子が売れ筋になり、みんなが貯蓄するようになった。
仕方ないので三剣商店は100ミリアで売っていたお菓子を小分けにして安売りした。
「二人で分ければ一人40ミリアで売る」というのだ。4人で分けてもいい。
1日に貰えるミリアを増やすために三剣家のお手伝いをしようと言い出す子も現れたが実現せず。
それなら家のお手伝いをしてお菓子を買って貰ってミリアを満額貯めようという話になった。
家の手伝いだけでゲームソフトを買ってもらうのは難しいが、ミリアを貯めれば買えるのだ。
そんな中、ルルリの値段がじわじわと上がっていった。
ルルリには使い道がまだ無かった。ルルリ商店は開店休業状態が続いていた。
しかし、ルルリグラスの数を競争していた子が、数個見つけただけの子から買い取りを始めると、
何の価値も無いはずのルルリグラスに値段が付き始めてしまった。
いまでは全体で1日に1個のルルリグラスを採掘するのも難しい。
だからか、ルルリの価値は100ミリアを超えて高騰を続ける。
1ルルリが250ミリアを超えた時に、ルルリは総額を発表した。
見たところ、採掘済みのルルリグラスは100個くらい。残りは100個くらい。
1ルルリは250ミリアなので、全員ぶんを合わせるとカインの資産25000ミリアに匹敵する。
ルルリを保有している子たちは、「これからはルルリの時代だ!」と盛り上がる。
ルルリが買い集めたビー玉は10個入りで100円だった。
ルルリグラス発行までの30日で、3000ミリア使って300個のビー玉を買い集めている。
偽造防止のための特殊インクは自腹だが、それを除けば、
3000ミリアの投資で25000ミリアの価値を創出している。
一方、三剣商店が配るお菓子はどんどん少なくなっており、みんなは貧しくなっている。
開始から50日目に、クラスのミリア保有額は52000ミリアになった。
・最初の20日は、カイン15000、クラスメイト5000の保有だった。20000。
・ゲームソフトを2本売って、新品はカインに6000で、中古はオークションで8000で売れた。
・その次の20日は、借金組がいて全体的に買い控えが起きた。毎日80*20ミリアが貯蓄に回る。32000。
・最後の10日は1人あたりのミリア平均使用額が30ミリアになり、毎日70*20ミリアが貯蓄に回る。14000。
総発行10万ミリアのうち、使われたのは48000ミリアだった。
三剣商店はお菓子が全然売れないので、三剣宮では毎日食後におやつが配られたとか。
頼み込まれて私物の「品薄の森」を手放したティーさんは、
春コミケの同人誌買出しに三剣家の女性黒服部隊を投入できる権利で手打ちにした。
コミケの後には食卓に山のようにBL本が積みあがっていたとか。
カインの資産は3万ミリア弱で頭打ちだったが、それよりも市場の停滞を不安視した。
一人が世界のすべてのカネを総取りしてしまうと、カネは動かなくなり、価値を失う。
カインにとって最も避けたいシナリオは、あのオークションの直後に皆がミリアへの興味を無くし、
ミリアの実質的な価値が無くなってしまうことだったが、その心配は杞憂に終わった。
これから増えた貯蓄に対応する魅力的な商品を三剣商店は並べるだろうし、
これを買えばクラスの皆が羨ましがるという商品を一本釣りすれば優越感が味わえる。
一方で気味が悪いのがルルリグラスだった。ここまで高騰するなら底値で少し買っておけば良かった。
しかし、これを買い占めることはルルリの思うつぼのような気がしたし、
何の買い物にも使えない通貨とも呼べない代物の価値がさらに騰がるとも思えなかった。
こうした状況下で、株式会社ワクニが設立された。
ワクニは、こども食堂を南部で展開する真面目な社会福祉事業だ。
公共施設の使用料をミリアで支払い、食材は寄付を募る。料金は募金だ。
1株100ミリアで募集し、100株が発行され、1万円の施設使用料は三剣商店が支払い、1万ミリアを受け取った。
この事業にはカインも大株主として乗った。
こども食堂は成功したが、事業としては赤字になり、募金6千円の処分について株主総会が開かれた。
大株主たるカインは事業の継続を訴え、4000ミリアを増資しても良いと宣言した。
ワクニが感激して、社長として借金を申し出ると、
ミリアは、「この件については三剣商店から4000ミリアを補填してもいい」と宣言して、
議決権のない株式が三剣商店に発行されるという形で収まることになった。
この事業はどんどん大きくなり、南部の地域を巻き込んで発展することになる。
赤字事業にも関わらず株を欲しがる子が殺到し、株価は1株500ミリアまで暴騰していた。
ワクニは株式を分割し、1株250ミリアの議決権付き株式を200株、
三剣商店が買った3回分12000ミリアの議決権なし株式を48株と改めた。
開始から60日目。
・クラスメイト個人のミリア保有額は56000ミリア。カインの資産は26000ミリア。
・三剣商店の発行ミリア数は132000ミリア。毎日100*20名ぶんと、ワクニの赤字補填ぶん。
・三剣商店が回収した総額は54000ミリア。1日のお菓子の平均売り上げは1人30ミリア。
・株式会社ワクニの時価総額は62000ミリア。1株250で200株が上場されている。
・発掘されたルルリグラスは110個。1ルルリ300ミリアで、時価総額は33000ミリア。
タケルはワクニの株を1000ミリア買っていて現在20株保有している。
調理でも活躍しているがボランティアなので給与は得ていない。
ワクニは40株、カインは60株を保有している。こども食堂は既に3回実施された。
家庭科の時間に本気を出して裁縫したハヅキが、法人化を勧められて、
第二のクラス内株式会社ハヅキが設立される。
最初から200株を50ミリアで発行したが、最終的に1株100ミリアの値段がついた。
ハヅキは「株を持ってない子を優先に」「安価で」という購入条件をつけた。
株を買ってすぐ手放した子もいたが、それだけで買った値段の倍儲けた。
ミリアも面白がって、議決権なしの株式を50株追加発行して貰っている。
こども食堂に作品を出展して販売するかわりに施設使用料の3割を支払っている。
これによりワクニの事業の赤字も無くなった。
ハヅキはやはりこの事業から給与を得ていないため、かかるのは材料費だけで、事業は黒字になる。
開始から70日目。
・クラスメイト個人のミリア保有額は60000ミリア。
・三剣商店の発行ミリア数は157000ミリア。毎日100*20名ぶんと、ワクニとハヅキの株。
・三剣商店が回収した総額は60000ミリア。1日のお菓子の平均売り上げは1人30ミリア。
・株式会社ワクニの時価総額は62000ミリア。1株250で200株が上場されている。
・株式会社ハヅキの時価総額は25000ミリア。1株100で200株が上場されている。
・発掘されたルルリグラスは120個。1ルルリ350ミリアで、時価総額は42000ミリア。
クラスメイトのポートフォリオ
・タケル 現金0ミリア 20ルルリ ワクニ株20 ハヅキ株20 品薄の森(4人で共有)
・ワクニ 現金1000ミリア 5ルルリ ワクニ株40 ハヅキ株10(高値掴み)
・ハヅキ 現金1000ミリア 5ルルリ ハヅキ株30 品薄の森(4人で共有)
・カイン 現金24000ミリア 0ルルリ ワクニ株60 ハヅキ株30(高値掴み)
・ルルリ 現金2000ミリア ワクニ株20 ビー玉100個
・他クラスメイト 現金32000ミリア ワクニ株60 ハヅキ株110
ここで夏休みに差し掛かってしまう。(一学期の出席日数は70日くらい)
ミリアは登校日にしか配布されないので、経済が40日間ほど停滞することになる。
ここでミリアは、良かれと思って、全員に2000ミリアの大ボーナスを配布し、
アリア祭りで使える屋台チケットを三剣商店で売り始める「GoTo祭りキャンペーン」を実施する。
そこですかさず、暇つぶしに漫画が読めるスマホアプリの株式会社カインが設立され、
10株主は優待でタダ、株の無い人はミリアを支払って漫画が読める仕組みだと説明すると、
1株100円スタートで、最終的に500円まで加熱する。
三剣商店は一か月先のお祭りのチケットがまったく売れずに頭を抱える。
夏休み直後。
・クラスのミリア保有額は80000ミリア。
・三剣商店の発行ミリア数は197000ミリア。毎日100*20名*70日+夏休みぶんと株。
・三剣商店が回収した総額は60000ミリア。もはや商品が全然売れない。
・株式会社ワクニの資本金は22000ミリア、時価総額は62000ミリア。1株250で200株が上場、48株が三剣商店。
・株式会社ハヅキの資本金は15000ミリア、時価総額は30000ミリア。1株120で200株が上場、50株が三剣商店。
・株式会社カインの資本金は20000ミリア、時価総額は100000ミリア。1株500で200株が上場。
・発掘されたルルリグラスは120個。1ルルリ400ミリアで、時価総額は48000ミリア。
その後、アリア祭りのチケットに50%のプレミアムを乗せて販売するが売れ行きが良くなく、
三剣商店が存在感を無くしたことを気に病んで、ミリアが「もうやめる」と宣言。
価値が無くなる前に、慌ててミリア紙幣でアリア祭りのチケットを買う流れになり、
ようやく三剣商店は思い通りのプレゼントを実現できるが、それは閉店セールであった。
ミリア経済は終わりを告げ、ミリア紙幣は紙切れになる。
ミリア個人は三剣商店の資産を引き継ぐ。
ここで、「議決権なし」の制約も取り除かれ、ミリアは発言権を得るが、本人が行使しない。
・ミリア 15ルルリ ワクニ株48 ハヅキ株50
三剣商店が閉店セールをやっている頃、
ルルリ大量保有者が「基軸通貨をルルリにして経済を継続すべきだ」と主張したことで、
残ったミリアがルルリに買い替えられ、ルルリはとんでもなく暴騰してしまう。
ミリア離脱後。
・株式会社ワクニの時価総額は49.6ルルリ。1株0.2ルルリで248株。
・株式会社ハヅキの時価総額は25ルルリ。1株0.1ルルリで250株。
・株式会社カインの時価総額は40ルルリ。1株0.4ルルリで100株。
・発掘されたルルリグラスは150個。1ルルリ1000ミリアで交換され、時価総額は150000ミリアだった。
クラスメイトのポートフォリオ
・タケル 10ルルリ ワクニ株20 ハヅキ株20 カイン株10 お祭り券1万5千円ぶん
・ワクニ 5ルルリ ワクニ株50 ハヅキ株10
・ハヅキ 5ルルリ ハヅキ株30 お祭り券3千円ぶん
・カイン 6ルルリ ワクニ株60 ハヅキ株30 カイン株100
・ルルリ ワクニ株10 カイン株10 お祭り券3千円ぶん ビー玉100個
・ミリア 15ルルリ ワクニ株48 ハヅキ株50
・他クラスメイト 現金109ルルリ ワクニ株60 ハヅキ株110 カイン株80
これをミリア換算で最終スコアにすると、こうなる。
・タケル 32000 現金を投資に回していたのとルルリを掘ってたので勝ち
・ワクニ 16000 資産のほとんどが自社株なので事業で儲ける社長タイプ
・ハヅキ 11000 自社株も少ないので会社が業績を上げても金持ちにならない
・カイン 61000 最後に無茶な会社を立ち上げてまで株価操作に執心したので勝ち?
・ルルリ 109000 ビー玉にサインして自分の物にすれば一等賞で勝ち(しないけど)
・ミリア 29600
・他クラスメイト 164000/15名(クラスはミリアを入れると総勢21名)
この話のオチは、「ルルリはビー玉を100個持っている」で終わり。
偽造防止インクが完璧なら、10円で買ってきたビー玉をいくつでも1ルルリに出来る。
ビー玉を買い足すのを禁止したとしても、
最初の段階で100個のビー玉にサインをして隠し持っておくことは出来るわけで。
ルルリは基軸通貨なのに、最初から最後に至るまで、何の兌換価値も提供していない。
ルルリ商店が存在したことは一度もないのだ。
100個のビー玉にサインするルルリ。
ルルリ「これから一日一個、これを隠してこようかしらね」
カイン「隠したら他人の物になっちゃうでしょ?!」
ルルリ「必死こいて宝探しするみんなを眺めるのが一番の贅沢だわ」
カイン「貴女、いい趣味してるわね」
ルルリ「ミリア、サイン入りのルルリグラス一個で、三剣商店のビー玉はいくつ買えるかしら?」
ミリア「10個で100円です」
ミリア「偽造防止ペンは1本5000円で、検査機は1万円」
ルルリ「ミリアを集めて買っておくんだったわ」
ミリア「失ってわかる三剣商店の大切さ」
ルルリ「わりと拗ねてる」
ミリア「わたし経済きらーい」
終焉。
生産者たる三剣商店がいなくなったので、世の中の商品が裁縫と漫画だけになる。
株式会社ワクニは人気が無くなって施設使用料の1万円が支払えなくなり倒産。
行き場を失った資本がカイン株に流れ、クラスメイト全員が漫画の無料権を手に入れる。
カインは自社株を売り払いハヅキ株に全力。株式会社カインは漫画を読み終えたころに計画倒産。
最終的に、宝探しをしてビー玉を集めてきたらハヅキにお裁縫して貰えるだけの遊びに収まる。
ハヅキ「別にいいけど、これは何なんだ? 別にいいけど」
ルルリ「あと30個ほど見つからずじまいなんだけど、ほっといていいかしらね」
ポイント
・借金と株価高騰とルルリグラスによって、経済規模が膨れ上がっている
・現金に価値を感じる人が増えるほど、貯蓄が増えて、消費が貧しくなる
・全員に毎日等しくお金を配っても、全員が豊かになるわけではない
・中央銀行がお金を回収するなどして、市中にお金が無くなると、経済は停滞する
・中央銀行が株を買い支えると株価は下がらない
・人々が通貨だと思ったものが通貨になり、取引した株価が時価になる
・ルルリは通貨発行権を獲得している
ミリアが本当はどうしたかったのか不明だが、仮に現物支給だった場合、
70日間で毎日100円ぶんのお菓子を受け取り、夏休みには3千円ぶんの祭りチケットを貰える。
ミリアがクラスメイト1人に1万円を配るのと同じこと。
ゲームしたり安いお菓子が買えたり漫画読んだりってのは市場があったから生まれたこと。
こども食堂が実現できたのは市場のおかげ。
ルルリの宝探し遊びに熱が入ったのも市場のおかげ。
ミリアは不満そうだけど、この遊びが起こした熱量は結構大きい。